工場の断熱材・保温材はいつ更新する?劣化による配管腐食を防ぐ点検方法と改善事例

配管から漏れているわけではないのですが、保温材が古くなってボロボロになっています。見た目だけの問題なら、補修しながら使い続けてもよいのでしょうか?

見た目だけで判断しない方が安心です。保温材が水分を含んでいたり、すきまから湿気が入り込んでいたりすると、外からは正常に見えても、保温材の内側で配管外面が腐食していることがあります!

保温材だけでなく、中の配管まで確認した方がよいということですね。屋外だけでなく、湿気の多い屋内配管も気になります。

その通りです!使用環境に合わせて材質や厚み、外装方法を選び、年数がたった設備は保温材と配管を一緒に点検することが大切です。

目次

「保温材が少し傷んでいるだけなら、急いで直さなくてもよい」と考えてしまうことがあります。しかし、保温材の劣化は見た目だけの問題ではありません。

屋外や湿気の多い場所では、雨水や湯気などによって保温材が濡れることがあります。また、長年使用するうちに保温材が収縮すると、継ぎ目にすき間が生じ、そこで結露が発生することもあります。水分が入り込んだ状態が続けば、断熱効果が落ちるだけでなく、中の配管が腐食する原因にもなります。

特に注意したいのは、配管から漏れがなくても、保温材を外してみると外面腐食が進んでいる場合があること(保温材下腐食)です。

現場では、次のような困りごとにつながります。

  • 保温材が濡れて断熱効果が低下する
    保温材は空気層にて放熱を押さえているものですが、水に濡れてしまうと、空気層がつぶれてしまい、本来抑えたい熱の出入りが増え、放熱してしまう恐れがあります。
  • 保温材の内側で配管腐食が進む
    外から配管表面を確認できないため、腐食に気付くまで時間がかかることがあります。その間、腐食が進み、漏れて初めて気づく事も。
  • 腐食した配管から漏水する
    配管更新や緊急修理が必要になり、修理作業も増えてしまいます。保温をめくると、内部配管の劣化がひどいなんてことも…。
    そのまま放置すると、配管より漏れが生じ、更新する必要が出てくるなど大きな費用が発生することもあります。
  • 蒸気配管など熱い配管の保温が劣化すると、表面が熱くなる
    断熱性能が落ちると保温材の表面温度が上がり、触れると火傷のおそれがあります。

保温材が付いていると安心してしまいますが、逆に配管が見えないことが点検の難しさにもなるのですね。

そのため、年数が経過した保温材では、表面だけを見るのではなく、一部を外して内部を確認する方法も有効です。

一般的によく使用されるグラスウールについて、10~15年が一つの点検・交換の目安となります。ただし、屋外、湿気の多い場所、湯気が当たる場所では劣化状況が変わります。

「10年たったから交換」「まだ10年だから大丈夫」と年数だけで決めず、実際の保温材と配管の状態を見ることが重要です。

保温材が水分を含んでいる場合、そのまま乾かして使い続ければよいとは限りません。

濡れた原因を確認し、必要に応じて保温材を取り替えます。さらに雨水や湯気などが繰り返し当たる場所であれば、再発を防ぐために外装方法まで見直した方がよいでしょう。

屋外配管では保温材の外側を金属板で覆う外装(ラッキング)が使われますが、環境によっては屋内でもラッキングを取り付ける方法があります。

ただし、ラッキングを施工したからといって水分が完全に入らなくなるわけではありません。年数がたつと継ぎ目にすきまができたり、コーキングが劣化したりします。

また、蒸気配管など、配管に熱がかかる場合、配管の伸縮により保温材の接続部に隙間ができ、そこから水が侵入してしまうこともあります。外装部分も定期的に確認しておくことが大切です。

保温材だけを交換するのではなく、「なぜ濡れたのか」まで確認して施工方法を決めることが、同じ修理を繰り返さないポイントです!

業種:自動車部品工場
地域:愛知県
工場規模:1000㎡
工期・体制:2日
予算:60万円
施工規模:配管更新+保温更新30m
施工前の保温補修費:年間45万円(2ヶ月に1回修理、平均8万円くらい)
施工後の保温補修費:ここ1年間、補修無し(施工が1年ほど前なため)

問題点

塗装ラインの配管には保温が施工されていましたが、1~2年もたたないうちに保温材が劣化して飛散する状態になっていました。品質面でも好ましくないうえ、傷んだ部分を修理しても今度は別の場所がボロボロになるため、補修を繰り返す「いたちごっこ」の状態が続いていました。

調査内容

修理時に保温材の一部を実際に取り外し、見えていなかった配管外面の状態と、保温材内部の劣化状況を確認しました。表面の傷みだけを見るのではなく、保温材の内側まで確認したことで、設備から発生する湿気が保温材を劣化させ、配管腐食にも影響していることを確認しました。

提案・工事内容

劣化した保温材だけを再び補修すると、同じ問題を繰り返すおそれがあります。そこで、腐食していた配管を更新するとともに、設備周辺の湿気を考慮して保温材の上にラッキングカバーの取付を行い、保温材を更新する提案をしました。何度も同じ補修を続けるのではなく、湿気という根本原因を確認したうえで保温の劣化に対して、保温方法そのものを見直したことが今回の改善ポイントです。

成果

これまでは保温材の劣化が起きるたびに修理をしていましたが、保温方法を変更してから劣化が収まり、修理をせずに済んでいます。

お客様の声

保温材は時間がたてば劣化するものだと思い、傷んだ場所をその都度直していました。しかし、保温カバーを取り付け、保温そのものに直接水分が当たらないように変更したことで修理回数が減りました。同じところを何度も直すだけではなく、原因に合わせて方法を見直すことが大切だと分かりました!

保温材の更新で大切なのは、新しい材料に交換することだけではありません。使用する場所に合った材質・厚み・施工方法を選び、内部の配管まで含めて状態を確認することがポイントです。

今回の事例とヒアリング内容から、特に意識したい点を整理すると次のようになります。

  • 年数だけでなく、実際の劣化状態を見る
    10~15年は一つの確認目安です。湿気や水が多い場所では、それより早く状態確認が必要になることがあります。
  • 保温材の表面だけで判断しない
    一度保温すると配管そのものが見えにくくなります。必要に応じ、一部を外して外面腐食を確認します。
  • 濡れた原因まで確認する
    傷んだ部分だけを交換するのではなく、雨水、湯気、湿気など、どこから水分が入ったのかを調べることが再発防止につながります。
  • 環境に合った厚み・材質を選ぶ
    保温材には複数の種類と施工方法があります。配管温度や設置環境を踏まえて選定することが重要です。
  • ラッキングも定期的に見る
    ラッキングがあっても、コーキングは時間とともに劣化します。また、配管の伸縮により、隙間ができることがあるので、ラッキングのすきまや変形の有無を確認しておきましょう。

保温材は、一度施工すると普段あまり触らない部分の一つです。そのため、「まだ付いているから大丈夫」と判断しているうちに、内部では劣化が進んでいることもあります。

配管漏れが発生してから直すより、保温材の状態を確認するタイミングで配管外面まで見ておけば、大がかりな更新や高額な修理になる前に対策できることがあります。

保温をはがしてみると、配管が錆だらけ
保温を直すだけでなく、配管も合わせて確認
Q
保温材はどのくらいの周期で交換すればよいですか?
A

一般的によく使用されるグラスウールについて、10~15年を一つの点検目安としています。ただし、設置環境によって劣化速度が異なるため、年数が経過したら濡れ、すきま、変形、外装材の傷みなどを確認し、状態に応じて更新を判断しましょう。

Q
ラッキングを施工してあれば、雨や湯気の影響は受けませんか?
A

ラッキングで雨や湯気の影響は大きく減らせますが、完全には防げません。長期間使用すると継ぎ目にすきまができたり、コーキングが劣化したりすることがあります。そこから水分が入り込むこともあるため、保温材だけでなくラッキングの継ぎ目やシール部分も点検しておくと安心です。

Q
保温材は何を基準に選べばよいですか?
A

配管の温度、設置場所、周囲の湿気や水分、必要な断熱性能などを踏まえて選びます。また、保温材だけでなく外装方法まで含めた検討が必要です。種類や施工方法が複数あるため、「これを使えばどこでも問題ない」と考えず、実際の設備環境を確認したうえで当社に相談してください。

Q
配管から漏れていなければ、保温材を外して確認する必要はありませんか?
A

漏れがないことだけで、配管は大丈夫とは判断できません。保温材を外して状況の確認が必要となります。一部外して配管状況を確認しましょう。

Q
保温材だけ部分補修しても問題ありませんか?
A

表面だけの傷みで、内部の保温材や配管に問題がなければ部分補修で対応できる場合もあります。一方、同じ周辺で何度も補修を繰り返している場合は、湿気や水分など別の原因が残っているかもしれません。その場合は、補修範囲を広げる前に原因を確認することが重要です。

見えない配管だからこそ、漏れる前の点検が修理の手間とムダを減らします

保温材は、熱や結露から配管を守り省エネにも役立つ設備ですが、施工した後は内部が見えにくくなります。「漏れていないから大丈夫」と思っていても、保温材の内側で腐食が進んでいることがあります。

特に、屋外や湿気、湯気の多い場所では、年数だけで判断せず保温材と配管を一緒に確認することが大切です。同じ場所を何度も補修しているのであれば、部分修理を続ける前に原因まで調べてみましょう。

適正な保温材と施工方法を選べば、設備保全の手間を減らすだけでなく、熱損失を抑える省エネやCO2削減にもつながります。今ある保温材を長く、安全に使うためにも、「付いているから大丈夫」ではなく、定期的に中まで見ることが改善の第一歩です。

この記事を監修した人

川澄 恵一

川澄 恵一

豊安工業株式会社 プラント管理部2課 係長
得意分野:プラント配管工事

工場や事務所の改修・修繕・改善工事を数多く担当し、現場での経験を積み重ねてきた。配管および付帯機器に関する深い知識と実践力を活かし、自動車部品製造工場をはじめとする多様な現場で高品質な施工管理を行っている。

工場ペディア監修

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