工場で水道水や純水は使っていますか?
純水は各工程やワークに対して、水質や純度などを合わせながら使えば、より効果的ですよ。
うちの工場では水道水しか使っていないので、ワーク洗浄の乾燥後に不純物が発生することがあります。
純水装置を導入したいのですが、何から取り組んでいいのか分からず、悩んでいます。
純水や純水装置のことを一度に理解しようとするのは大変ですよね。
一つ一つ着実に覚えていきながら、省エネやコストダウン、品質改善に繋げていきましょう。
純水の基礎知識
純水とは?
純水とは、不純物を含まないかほとんど含まない、純度の高い水のことです。
主に塩類や有機物などがほとんどすべて除去された状態を指します。
純水はこんな場面で活躍しています
洗浄用水
塗装、メッキ、ガラス、ビン、バス、電車、レンズ等、様々な業界で洗浄水として純水が使われています。業界により求められる純度は異なります。
原料水
飲料、シャンプー、化粧品関連等の原料水として純水が使われています。
電着塗装
自動車のボディやスチール家具等の電着工程用の洗浄で純水を使用し、塗膜不良を防止します。イオン成分が持ち込まれると電着槽の電気特性が変化し仕上がり不良となるためです
クリーン蒸気発生装置
滅菌や加湿に使用する高品質なクリーン蒸気を作るため、純水を提供します。
「純水」と言っても、お客様から求められる純度は様々です。
豊安工業では、お客様にとって最適なシステムをご提案しています。
こんなこともできる!
純水装置の今を知る
低温給水に影響されない
定流量制御
RO装置は水温の影響を受けずに所定流量を提供できる定流量制御を採用しています。水の粘性が上がる冬場でも流量を低下させないため、給水加温も水量低下を見越した装置選定も不要です。
これまで別々だった装置が
ワンユニット化
従来は、RO膜や脱炭酸膜、EDIモジュールを搭載したそれそれの装置でしたが、原水や要求水質に応じて適切なシステム構成が可能となるワンユニット化商品があります。
薬品を使用しないシステムで
クリーンな作業環境を構築
イオン交換式の純水装置では、薬品(酸とアルカリ)による定期的な再生が必要でした。RO方式やEDI方式では薬品を使用せず純水を提供できます。
小型ユニットの多缶設置で
リスク分散が可能に
RO装置を複数大並べることで、一部、点検等で停止するラインがあっても通水を継続できます。また、パッケージ化されたRO装置の密着設置で省スペース化が図れます。
効率化、ワンユニット化、省スペース化からクリーンな作業環境の確保まで、純水システムはますます進化しています。
はじめての純水装置
はじめて純水装置の活用を検討される場合は、以下を確認してください。
純度の確認 | 純水にはどれくらいの純度が必要か |
水量の確認 | 時間当たり何m3(立米)の水量が必要か |
水質の確認 | 原水は何を使用するのか(水道水、工業用水、井戸水など) |
手当たり次第に純水を使ってしまうとコストがかかるため、適材適所で進めてください。
ここからは豊安工業が提案した、純水装置導入にあたっての実例をご紹介します。
純水装置導入にあたっての実例
実例1:水道水から純水への切り替え
ワークの洗浄水に水道水を使用していたが、不純物が残り、検査・仕上げが手間に
愛知県 精密機械加工会社様
提案内容
具体的にどのような不具合が発生していて、どれくらい手間がかかっているかを見える化した上で、豊安工業が最適な装置を選定。
RO膜を使用したRO装置3m3/を導入いただきました。
改善効果
水道水から純水に切替えたことにより、不純物の付着の心配がなくなり、以下の効果につながりました。
- 生産効率:20%改善
- 不純物清掃にかかわる人件費削減:100万円/年
実例2:純水装置の設備更新
冬場の水温低下による純水不足回避のため大型設備を使っているが、導入コストを抑えて最適な設備に更新したい
愛知県 部品塗装会社様
提案内容
本来の水量は2m3/hでよいはずが、冬場の水温低下でRO装置の純水の処理水量が減ってしまい、純水が足りなくなってしまうため、3m3/hの装置を使用しているお客様。維持コストもかかるため、早急に更新が必要でした。
そこで、2m3/hタイプで、水温により加圧ポンプをインバーター制御、設定水量を安定供給できる「フィードバック定流量制御」搭載型を採用していただきました。既設のRO装置は撤去し、出側流量制御が適正なRO装置に更新しました。
改善効果
従来に比べて膜モジュール(RO膜)本数を最適化でき、初期設備導入、メンテナンスコストを減らすことが可能となりました。
- 2m3/hのRO装置でよくなり設備導入コスト削減
- 設備維持コスト削減:80万円/年
- 電気代削減:15万円/年
実例3:再生型イオン交換純水装置の導入
設備導入コスト、ランニングコストを抑えて省エネしたい、CO₂削減しカーボンニュートラルに貢献したい
提案内容
従来型の純水装置は、再生時に使用する再製剤を40~60℃に加温をする必要があり、再生用に蒸気が必要とされています。
そこで、次世代型である、再生時に温度加温の必要のない「再生型イオン交換純水装置」をご提案させていただきました。
改善効果
蒸気配管の施工をしなくてよくなるため、設備導入コストが抑えられるだけでなく、加温に係るエネルギーのコストを軽減できます。
また、蒸気を使用しなくてよくなるため、CO₂を削減、カーボンニュートラル社会の実現にも寄与できます。
純水装置の導入・設備更新は様々なメリットがあります。
ここからは、現場での純水装置の活用事例をご紹介します。
純水装置の活用事例
低温給水に影響されない定流量制御で
省コストと省エネの実現!
改善効果:ランニングコストが10m3/hあたり
年間約450万円ダウン!※加温設備の導入も不要!
※RO回収率70%、加温設定15→25℃、運転時間3000時間/年、燃料は都市ガス(13A)として試算
改善前:冬季の低温給水を考慮したRO膜本数選定
水温が下がると水の粘性が増します。RO膜処理で得られる処理量は水の粘性の影響を大きく受け、水温が下がる季節では処理水を得にくくなります。そのため、RO膜の本数は水温が低い時期を考慮した選定が必要となり、水温が高い時期では過剰な選定となっていました。
改善前:RO膜本数を抑えるには給水加温が必要
RO膜の本数を少なくし、給水の水温が低い時期でも規定量の処理水量が得られるシステムにするには、水温低下時に蒸気によってRO装置の給水を加温する必要があり、水処理コストに蒸気使用コストが加算されていました。
改善後:処理水定流量フィードバック制御
水温の影響を受けずに設定水量を安定供給できる「フィードバック定流量制御」を採用。従来に比べて膜モジュール(RO膜・EDIモジュール)本数を運転初期から減らすことが可能となりました。
原水圧力を有効利用し、省エネに貢献
改善効果:従来型に比べて、年間平均30%の省エネ
※原水圧力0.3MPaの場合
従来型:原水圧力を減圧し、常に一定圧力で給水
従来のRO装置では原水圧力を減圧し、常に一定圧力で給水する必要がありました。
現在:給水圧力を自動調整
現在はRO装置の運転条件に応じて給水圧力を自動調整することで、RO装置のポンプ消費電力をより抑え、省エネに貢献します。
純水製造システムの高効率化・小型化により、
約55%の省スペース化を実現!
改善前:従来の「イオン交換式純水製造システム」
イオン交換式の純水装置では、薬品(酸とアルカリ)による定期的な再生が必要となり、現場のタンクへの薬品補充は、主にトラック搬送によって行われていました。また、これらの薬品は劇物に指定されており、取り扱いや作業環境への整備が必要となっていました。
大型の純水製造装置や貯水塔を設置するため、屋外に広い工業用地が必要でした。また、設置に伴うイニシャルコストや、運営面での人件費にも多くのコストがかかっていました。
改善前:従来の「RO+イオン交換式純水製造システム」
純水製造システムのコアユニットは屋内に設置しますが、大型であるために、設置には広い空間が必要でした。
大容量の場合、純水カートリッジでは、カートリッジの交換に多くの時間と労力が伴います。また交換するためにトラックの搬入スペースや作業空間を確保する必要がありました。
改善後:最新の「純水製造システム」
純水製造システムの高効率化・小型化により、屋内に最小限のスペースで設置可能。クリーン作業環境を実現し、空いたスペースを会議室等に有効活用できます。これまで必要だった純水カートリッジの交換や、大型トラックの搬入などが不要になります。最小限の敷地で運営できるため、空いた敷地は駐車場や緑の空間などへ有効活用できます。
スケール分散剤を併用することにより、回収率を10~30%アップ!
原水コスト削減、節水も図れる
改善前:RO装置の膜がよく詰まって回収率も上がらず、水量が足りない
水質によるRO膜のよくあるトラブル
- 硬度やシリカが高くて回収率が低い!
- 濃縮排水量が多く、下水費用が!
- スケールトラブル!
- プレフィルター、膜がすぐ詰まる!
- 洗浄で膜が劣化?
改善後:RO膜用水処理薬品でRO装置のトラブルを未然に防ぎ、省コストで運転
RO装置の回収率を上げるためにスケール分散剤をお勧めします。
RO装置の回収率を上げようとすると、水質によってさまざまなトラブルが発生します。
RO装置のトラブルを未然に防ぎ、省コストで運転するお手伝いをするのが、RO膜用水処理薬品です。
よくある質問
膜を使用したRO装置や、樹脂を使用した純水装置、電気を使用したEDI装置等があります。
膜の選定を変更することにより、通常の1.3倍程度の採水が可能になります。
RO装置の場合だと、回収できない部分の水は使用できず排水となるため、排水分がコストになります。
詳しく解説した関連記事がありますので、ご参照ください。
工場ペディア編集部からのメッセージ
純水、純水装置を正しく活用できればメリットが多い
省エネやカーボンニュートラルの実現にも
近年、RO膜技術の進化により、純水の製造コストが大幅に削減されました。これにより、高品質な純水をより手頃な価格で取得することが可能となり、自動車産業、製薬業界、半導体製造、食品加工業、化学工業など、さまざまな産業での利用が拡大しています。
純水の活用方法は無限大で、例えば自家水道を導入する場合、併せて純水装置を設置すると塗装や洗浄に使う純水として利用できるようになり、水源活用の幅が広がります。また、工場排水を高度ろ過処理・リユースすれば、更なる省エネやコストダウンにも繋がります。アイデア次第でさらに多くの場面でも利点を享受することができます。
純水に関するお困りごとやご要望を、ぜひお聞かせください。
私たちは、お客様の具体的なニーズや課題を深く理解しながら、純水について最適な提案ができることを目指しています。一緒に最善の解決策を模索し、効果的な改善を実現しましょう。
この記事を監修した人
池田 広行
豊安工業株式会社 アクアエンジニアリング部
資格:管工事施工管理技士1級、一級ボイラー技士、ボイラー整備士、危険物取者乙種4類
得意分野:蒸気ボイラー熱源設備、水処理設備全般(ろ過、膜、排水設備)
設備のトータルプランニングや配管工事、そしてメンテナンスに関する業務に豊富な経験を持つ。 カーボンニュートラルの取り組みとして、省エネ機器の導入や、排水設備の適正処理における廃棄物削減、 水資源の有効活用による、環境保護に重点を置いて活動している。 主な取引先は製造業、特に自動車部品加工、ゴム製品、化学工業、非鉄金属製造(ケーブル)、繊維工業、食品加工など。