定期的なクーリングタワー(冷却塔)メンテナンスでトラブル回避、省エネ効果やCO₂削減にも!自分でもできる日常点検とは?

クーリングタワーの定期的なメンテナンスはしていますか?
法定点検はあるけれど罰則がないので、ボイラーのように定期点検を実施していないことが多いです。
しかも基本的に屋外に設置されているので通常使用しているだけで汚れが付着し、水質が悪くなり消費電力が増加しコスト高につながります。

消費電力にも影響があるんですね!
ただどこから手を付けていいのか分からず、設置から2~3年が経ちましたけどまだ何もできていません。

まずはお客様ご自身でできる簡易清掃、日常点検から初めてみてはどうでしょうか?
もちろん専門業者である豊安工業へ依頼いただくこともできます!
クーリングタワーのメンテナンスの第一歩は水質管理と清掃です。
その他にも維持管理に重要なポイントを説明しますね!

目次

クーリングタワーは空調機や冷凍機の冷却水を冷却するために使用され、冷却水を効率よく循環利用するために必要な設備です。
形状は、角型と丸型があり構造・冷却方法で開放式と密閉式の2種類あります。
今回は一般的によく使用されている開放式を紹介します。
開放式クーリングタワーでは、冷却水と外気を直接接触させて一部の冷却水が蒸発することで残りの冷却水を冷やしています。
常温では水の蒸発の潜熱は約2,500kJ/kgで、比熱は4.2kJ/(kg・K)なので、1%の水の蒸発によって残りの水の温度は、約6℃下がることになります。

  1. クーリングタワー水槽
  2. ルーバー、充填材
  3. 送風機
  4. その他
クーリングタワー(角型)
クーリングタワー(丸型)
上部水槽(角型)
下部水槽(角型)
送風機(角型)
送風機(丸型)
充鎮材、ルーバー(角型)
ボールタップ(角型)

あまり知られていませんが、クーリングタワーに法定点検があります。
罰則がないため実施していないことも多いですが、とても大切な点検です。

(2)冷却塔及び冷却水は、使用開始時と使用開始後一か月以内毎に1度、定期的に汚れの状況を点検し、必要に応じて清掃及び換水等を行う事但し、1か月を超える期間使用しない冷却塔は、その不使用期間中は、この対象とならない。

(3)冷却塔、冷却水の水管、加湿装置の清掃を、1年以内毎に1度、定期的に行う事。

安全に長く使うためにも点検は重要です。
クーリングタワーを日常的に清掃する時のポイントを確認していきましょう。

  • 冷却塔は常に外気に触れているので、充填材には自然に汚れが付着していきます。
    汚れが溜まっていくと冷却能力の低下につながるため、定期的な清掃が必要です。
  • クーリングタワーの水槽を目視点検し、水のにごりや異臭が無いかを確認しましょう。
    クーリングタワー水槽底のストレーナ部に藻やスケール等が溜まっていないかも要チェックです。

充鎮材

ストレーナ

  項目 部品名             点検項目点検頻度耐用年数
送風機翼車傷、摩擦、変形、劣化、腐食、汚れ目視点検3ヶ月5~7年
Vプーリ溝の磨耗、腐食、軸調整、目視点検1年7~10年
Vベルト磨耗、張り具合、損傷、点検調整1ヶ月1~2年
軸受目視点検1年7~10年
ケーシング傷、変形、腐食、汚れ目視点検1年10~15年
モータ本体異常音、異常振動、腐食、電流値、目視点検1年7~10年
ベアリング異常音、異常振動、腐食、電流値、目視点検1年2~3年
充填材充填材スケール、スライムの付着、変形、目詰まりを清掃3ヶ月7~10年
冷却塔本体骨材腐食を目視点検1年10~15年
下部水槽破損、変形、汚れ、腐食、水漏れを点検、清掃1ヶ月10~15年
上部水槽破損、変形、汚れ、腐食、水漏れを点検、清掃1ヶ月10~15年
外板傷、変形、腐食、汚れを目視点検3ヶ月5~7年
ルーバ破損、変形、劣化、汚れを目視点検、清掃3ヶ月5~7年
ストレーナ変形、目詰まり、破損を点検、清掃、分解点検1ヶ月5~7年
ボールタップ作動確認、内部ストレーナの清掃、腐食を点検、清掃、分解点検1ヶ月3~5年

①水槽の清掃

クーリングタワーは水質管理と清掃が非常に重要な設備です。
設置環境にもよりますが、砂や落ち葉など汚れが付着、蓄積されて冷却能力が低下します。定期的な清掃で本来の状態を保ちましょう。
お客様ができる簡易清掃と専門業者へ依頼して行う本格的な清掃がありますが、まずは簡易的な清掃から始めてみましょう。

簡易清掃に必要な道具は2つだけ、付近の給水配管から届くホースとデッキブラシです。高圧洗浄機もあればより効率的に清掃ができます。

③送風機、モータの点検、整備

クーリングタワーの送風機は経年により異音がすることがあります。他にもファン本体の破損、モータや軸受、モータとファンを繋ぐVベルト、ベルトをかけるVプーリーなど異常があると異音がします。
送風機の異音は毎日の点検や定期点検で気づけます、日常点検で異常に気付き大事故が起きないよう対策をしましょう。

②充填材の交換

クーリングタワーの充填材は、水を外気と効率良く接触させて温度を冷やす目的で設置されていて、メーカーの推奨耐用年数は7年と言われています。7年以上使用しているケースも多いですが、それでは本来の能力は発揮されません。

専門業者の清掃によってある程度の汚れを落とすことはできますが、それでも100%の能力を維持するのは難しいです。
設置から10年以上経過した時点で交換を検討されることをおすすめします。

まずはお客様ができる簡易清掃、日常点検から始めてみましょう。
もちろん本格的な点検、清掃は専門業者である豊安工業へお任せください!

クーリングタワーの日常点検は継続して行うことが大切です。
これだけはやっておきたい点検項目をご紹介します。

項目内容実施目安
本体外観水槽、外板、ルーバ部分に傷、破損はないか1回/日
充填材汚れ、スケール、スライムの付着はないか1回/日
水質水槽の水質に濁りはないか、異臭はしないか1回/日
異音送風機モータより異音(いつもと違う音)はしないか1回/日
冷却水ポンプモータより異音(いつもと違う音)はしないか1回/日
電流計数値計器の数値は正常範囲内かを目視確認1回/日
圧力計数値冷却水ポンプの圧力計は正常な範囲内か1回/日
薬液注入ポンプ薬液注入ポンプは正常に作動しているか1回/日
給水管ボールタップは正常に作動しているか1回/日
給水管の電磁弁、電動弁は正常に作動しているか1回/日

クーリングタワーの日常点検、定期点検をすることのメリットをご紹介します。

メリット1:省エネ効果やCO₂削減につながります

クーリングタワーの充填材が汚れによって目詰まりした場合には、外気を十分に取り入れることができなくなったり、水の分布が悪くなるため、冷却性能が大きく低下してしまいます。冷却性能が低下すると、使用先の冷凍機の負荷が増えることで電気費用が増加し製造工程の品質のばらつきや生産コストが増大します。生産コストの無駄を無くすことで省エネ効果とCO₂削減につながります。

メリット2:クーリングタワーの寿命を延ばせます

クーリングタワーの寿命は使用状況によって大きく変わります。通常は10年~15年ですが、メンテナンスをしっかりしていれば寿命を20年以上に延ばすことができます。寿命に一番影響するのが充填材の状態です。充填材を交換するにはクーリングタワーを更新するのに近い費用が掛かります。なるべく充填材を交換せず、長く使用できるよう日々のメンテナンスと水質管理を行っていきましょう。

メリット3:急な事故やトラブルを防止出来ます

メンテナンスを怠っていると急な故障やトラブルの原因になり、正常な能力を発揮できず生産工程や空調に大きな影響が出ます。定期点検を実施で異常を早期発見することで、大きな事故を未然に防げます。安全かつ安定的に冷却水を供給できるように定期点検を行いましょう。

冷却能力の低下

冷却能力の低下は充填材の詰まりや、ストレーナの目詰まりによる循環水量の低下が原因です。送風機の不具合による風量の不足も原因のひとつです。

送風機の異常、振動

ファンの回転異常は異音が発生する事が多く、放置しておくと重大な故障につながります。冷却能力低下を防ぐためにも日常点検で早期発見することがポイントです。
少しでも異常と思った時は送風機の点検を行い、モータやベアリング、Vベルトなどのメンテナンスをしましょう。
ファンは冷却塔で唯一の稼働部位なので、定期的な検査が有効な対策です。

循環水量不足、オーバーブロー

ボールタップの故障による水位が低下、散水パイプの目詰まり、ストレーナの目詰まりによって発生します。ボールタップの取替、ストレーナの清掃は簡単にできるメンテナンスです。水量不足になる前に定期的に行いましょう。

ポンプも運転時間が多ければ不具合が起きやすいです。
2台以上で運転を切替する事でリスクを低減、万が一の場合でも空調や生産ラインを止める事なくメンテナンスが可能です。

クーリングタワーのトラブルは生産ラインの停止、職場環境の悪化につながりますが定期的なメンテナンスで防ぐ事ができます。
ここからは実際に行ったメンテナンス実例をご紹介します!

2022年10月実施
愛知県西尾市 自動車部品製造業様
工事費用:220,000円

生産工場用のクーリングタワーの清掃を実施しました。
設置環境の充填材と水槽の汚れが酷かったため、1回清掃した後に試運転を実施。
その後水槽底のストレーナに汚れが溜まったので2回目の清掃も行いました。1回の清掃のみですと、配管内の汚れも溜まってしまう事があるので状況によっては2回の清掃をおすすめします。

2022年10月実施
愛知県豊田市 自動車部品製造業様
工事費用:200,000円
送風機モータより異音
送風機モーター平ベルト交換工事

経年劣化による異音発生のため、調査後に送風機モータ部分の平ベルトの破断を確認し交換しました。
ベルトカバー内を清掃後に既設平ベルトを取外し、新規の平ベルトを取り付けました。モータ絶縁抵抗を測定した後に試運転調整を行い、取替工事後は正常に運転出来るようになりました。送風機モータが正常に運転されないと冷却能力が大きく低下し、生産に多大な影響を与えてしまいます。
今回はお客様が送風機モータの異音に気付く事ができたので、早い段階で交換する事が出来ました。

事例集サンプル
クーリングタワーメンテナンスの事例集
定期的なクーリングタワーメンテナンスでトラブルを回避、省エネができた事例の紹介と、定期点検のお見積り金額を掲載した資料です。

(空研工業 SKB-80R)

項目費用実施頻度
クーリングタワー清掃、保守点検220,000円1年
Vベルト取替、保守点検200,000円2年
ファンベアリング、モータベアリング、Vリング取替、保守点検420,000円3年
ストレーナ取替、保守点検280,000円5年
翼車、モータプーリ、ファンプーリ、Vベルト、軸受ユニット、モータ取替、保守点検2,400,000円6年
Q
クーリングタワーとチラーの違いは?
A

両方とも水を冷やす設備ですが、クーリングタワーは受動的に冷却水を冷やす設備、チラーは能動的に冷水を冷やす設備です。
クーリングタワーの冷却水は大量の熱を外気温度程度まで冷却、冷却温度にあまりシビアでないものに使用されます。
これに対しチラーの冷水は外気温度より大幅に低い温度までの冷却や冷却温度にシビアな冷却に使用されます。

Q
クーリングタワーの耐用年数は10年と聞きましたが本当?
A

クーリングタワーの耐用年数は一般的に10年と言われていますが、メンテナンスを行う事で15年以上使用する事も可能です。
計画的なメンテナンスは生産の消費電力を抑えられたりと、省エネ効果とCO₂削減コストダウンにも繋がります。

Q
クーリングタワーのメンテナンスは運転中でも可能?
A

クーリングタワーのメンテナンスや清掃は運転を停止している状態で行います。
工場の停止するタイミングを考慮して計画的に実施する必要があります。生産状況により土日でも停止出来ない場合は、GWやお盆休み等の大型連休に実施されるお客様もいらっしゃいます。

Q
クーリングタワーの水質管理は必要?
A

クーリングタワーは外気を吸い込んで水を冷やしていますので、空気中の土や埃といった不純物が水に溶け込みます。
水分が蒸発して濃縮するため、不純物の濃度が高くなっていきます。
そのためにも水質管理を行う必要があります。強制的に水をオーバーブローさせる方法や薬液注入ポンプによりスケールの防止、殺菌効果等を行う事で安定した水質を保つ事が出来ます。

豊安工業でも法令定期自主検査を代行しています。
検査実施までの流れをご紹介します。

1.ご相談

お問い合わせフォームよりご相談ください。
お電話でのご相談も承っております。クーリングタワーの型番がわかれば、現地調査しなくてもお見積り可能です。

2.現地調査

現地にてクーリングタワーの型式をはじめ状態、運転状況等を確認させていただきます。メンテナンスに必要な時間の目安もお伝えいたします。

3.お見積り

現地調査内容に基づきお見積りいたします。
クーリングタワーの状態にもよりますが目安として、保守点検200,000円~ をご想定下さい。

4.日程調整

クーリングタワーを止めてもよい日程をご提示いただきながら、メンテナンス日を調整します。

5.メンテナンス実施

ご担当者様の立会いのもと、メンテナンスを行っていきます。メンテナンス完了後、実施した証として、完了報告書をお渡しします。

クーリングタワーのトラブルは、工場の生産ラインや職場環境にとってかなりの痛手となります。定期的にメンテナンスをすることで少しでも早く異常を発見でき、ほとんどのトラブルを未然に防ぐ事が出来ます。

これを機に、クーリングタワーの正しい予知・予防保全に取り組まれてはいかがでしょうか。
正しく保全していけば、クーリングタワーの寿命を延ばす事ができ、結果として省エネやCO₂削減にもつながります。

この記事が、現場の環境を少しでも改善したい、というあなたの思いを実現するヒントになれば幸いです。

この記事を監修した人

石井 建作

石井 建作

豊安工業株式会社 第1プラント管理部
資格:エネルギー管理士、管工事施工管理技士1級、給水装置工事主任技術者、消防設備士甲種1類
得意分野:給排水衛生設備工事

給排水設備、冷却水設備、エアー設備、蒸気設備等の知識に精通。また、プラントにおける熱エネルギー管理について社内やお客様向けの勉強会を行い、教育活動にも携わっている。専門分野は、クーリングタワー、チラー、ポンプ等の冷却水設備工事。主に三河地区の自動車部品工場等の製造業の給排水設備工事及び省エネ・CO₂削減提案を手がけている。

工場ペディア監修

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