スチームハンマーは水撃とも呼ばれ、配管内の蒸気がドレン化して塊になり、L字管などの継手にぶつかったり、塊同士がぶつかって大きな衝撃音が出る現象です。衝撃により配管や継手などが破損したりすることも少なくありません。
バルブを開放するとき、急に開けるのはスチームハンマーが発生しやすいからNGと聞いたので、ゆっくり開けています。でも、やっぱりドンドンと音がすることもあり、時間も手間もかかるので正直続けるのが大変です。
バルブをゆっくり開けても、対策しないとスチームハンマーは発生してしまいます。
また、蒸気配管にはドレンがつきものなので、完全にドレンをなくすことは難しいです。ドレンをどこかで取るなど、一ヶ所ずつ適切な対策をしていけば、スチームハンマーを防止することができるようになりますよ。
スチームハンマー(ウォーターハンマー)が起こった場合の
対応や応急処置は?
徐々に悪化するよりも、突然発生する場合がほとんどです。
「ガタンガタン」「ドン」などの大きな衝撃音の場合は危険です。
落ち着いて対応してください。
- 発生元配管のバルブを閉めるなどして、蒸気の供給をストップしてください。
- ボイラー室で発生した場合は、ボイラーを止めてください。
- どうしても生産を続けたい場合などは、音が止んだら時間をおき、バルブを少しづつ開けて様子を見てください。
放置して改善されることはないので、専門業者に相談しましょう。
愛知県西三河地区の方は、こちらからご相談ください。
蒸気配管のスチームハンマー(ウォーターハンマー)とは?
配管内の蒸気が液体化すると、ドレンとなって、スチームハンマーの原因になります。
では、どんなときにスチームハンマーは起きやすいのでしょうか。
スチームハンマー(ウォーターハンマー)が発生しやすいのはどんなとき?
朝方や冬場など寒暖差が大きいとき
配管内外の寒暖差が大きいほど、ドレンが発生しやすくなります。気温が一気に下がる朝方や冬場、寒い地域では、特にスチームハンマーが発生しやすく、注意が必要です。
バルブを急に解放したとき
蒸気バルブを急に解放すると、冷たい配管内に突然温かい蒸気が流れ込むため、急激な温度差ができ、スチームハンマーが発生したり、配管を直接傷つけてしまう可能性があります。
配管がむき出しのとき
むき出しの配管は、季節を問わず外気温の影響を直接受けてしまいます。スチームハンマーが発生しやすいだけでなく、やけどやエネルギー効率低下を招く恐れがあります。
配管長が長いとき
長い配管は、短い配管に比べて外気に触れている面積や、圧力変化が起こる範囲が広いため、スチームハンマーが発生しやすくなります。ドレンは、横引き配管では配管の途中に、垂直配管では最下部に溜まりやすくなります。
動画とイラストでスチームハンマー(ウォーターハンマー)を解説!
スチームハンマーが起こっているとき、蒸気配管内ではどのような現象が起こっているのでしょう。
ここでは実際に、スチームハンマーを再現した動画をご紹介します。
※気体だとスチームハンマーが発生している様子が分かりづらいため、水を使って再現しています
この波がスチームハンマーの音の正体なんですね。
スチームハンマー(ウォーターハンマー)の未然防止対策は?
対策① 配管に保温材を巻く
保温材は、配管と外気の寒暖差を減らしてスチームハンマーを防止します。また、やけど防止や省エネ効果も期待できます。
環境に合わせた厚みや、気候に合わせて寒冷地仕様のものを選ぶなど、きちんと保温できる保温材を取り付けることが大切です。
対策② バルブの急な解放をやめる
蒸気を徐々に出しながら配管を温めることで、急激な温度差発生を防止します。人力だと、作業のバラツキ、安全性、工数などの問題があるので、自動的にゆっくり弁を開けてくれる自動弁や、タイマー制御の自動送気システムを設置しましょう。
対策③ スチームトラップを取り付ける
まずは配管にスチームトラップがついているか確認し、ない場合は取り付けを検討しましょう。スチームトラップがついているのにスチームハンマーが発生する場合は、必要量がついていなかったり、配管径に適していなかったり、配管の修理・改造時に管路が末端になってしまったり、詰まっていたりなどの要因が考えられます。太い配管の末端や、長い配管にあるスチームトラップは、特に注意しましょう。
対策④ ドレンが溜まらない配管設計にする
ドレンは低い方に流れていきます。そのため、配管の設計段階では、ドレン溜りが起きにくいように設計しますが、蒸気取り口を変えるなど、仕様変更した場合は注意が必要。周りの配管にも気を配らないと、思わぬところにドレン溜りが発生してしまう可能性があるので、ドレンが溜まらないように配管設計を見直しましょう。
どうしてもドレン溜りができてしまう場合は、スチームトラップで対策しましょう。
ここからは、対策の番号順に、実際にスチームハンマー対策ができた事例を見ていきましょう!
スチームハンマー(ウォーターハンマー)対策ができた成功事例4選
対策①の事例紹介:
配管に保温材を巻く
蒸気配管保温をやり替え工事後、スチームハンマーの改善だけではなく放熱ロスの削減にも繋がった
お客様情報 | 愛知県蒲郡市 |
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施工規模 | 蒸気配管100A40mm 35m |
工期 | 4人×1日 |
施工費用 | 60万円 |
効果金額 | 放熱ロス 32万円/年 |
旧工場から新工場へ渡る屋外の蒸気配管保温がところどころ剥がれてしまっていました。
また、場所によっては保温が無くなっていた場所も見られました。
休み明けの月曜日稼働時、新工場側にてスチームハンマーが発生しており、多量のドレンが発生していると考えられました。
保温工事のやり替え実施後、ドレン量が収まりスチームハンマーの
改善と放熱ロスの削減に繋がりました。
対策②の事例紹介:
バルブの急な開放、閉止をやめる
タイマー制御によって蒸気送気を自動化し、蒸気バルブ開閉を行う工数の改善ができた
お客様情報 | 愛知県知立市 |
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施工規模 | 蒸気配管4系統(65A、50A、32A×2本) 蒸気コントロール盤取付、各系統電動弁取付 |
工期 | 配管工事(2人×2日)、電気工事(3人×2日)、 保温工事(1人×1日)、試運転1日 |
施工費用 | 230万円 |
ボイラー室蒸気ヘッダーのバルブをお客様が毎朝開かれていましたが、複数人が担当されているため、開き方が均一でなく時折工場側でスチームハンマーが発生していました。
そこで、各系統に電動弁を設置し、コントロール盤を設ける事でタイマー制御によって蒸気送気を自動化しました。
これにより、蒸気配管が十分に暖気運転され工場でのスチームハンマーが改善されるとともに、合わせて客先担当者様方が蒸気バルブ開閉を行う工数の改善ができました。
対策③の事例紹介:
スチームトラップを取り付ける
電動弁付きトラップに変更し、蒸気温度が規定値に達するまでは電動弁を開きっぱなしにして初期ドレン排除
お客様情報 | 愛知県西尾市 |
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施工規模 | 既設 ボイラー室より蒸気配管100A 40m 末端トラップのみ有り 改善後 蒸気配管末端に電動弁付きトラップ設置(温度制御) |
工期 | 配管工事(3人×1日)、電気工事(2人×2日)、 保温工事(1人1日)、試運転1日 |
施工費用 | 90万円 |
お客様より相談いただき現場を確認しました。朝一の蒸気送気時、工場末端にてスチームハンマーが発生しているので何とかしたいとの事でした。
調査をした結果、蒸気行の配管と同距離ドレンの戻り配管がボイラー室へ走っており、そのため朝一のドレンが多いタイミングではドレン溜まりが抜けず、スチームハンマーが発生している状態でした。
そこで、末端トラップの電動弁付きトラップへの変更を提案させていただきました。
電動弁付きトラップは温度制御を行い、蒸気温度が規定値に達するまでは電動弁を開きっぱなしにし、初期ドレン排除に長けた設備です。
設置後、初期ドレンがきちんと排除されスチームハンマーは解消されました。
対策④の事例紹介:
ドレンがたまらない配管設計にする
配管と末端トラップの位置を変更することで、ドレンが抜けやすい状態になり改善
お客様情報 | 愛知県刈谷市 |
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施工規模 | 蒸気配管40A 末端変更及び取り出し配管変更、スチームトラップ取替及び位置変更 |
工期 | 配管工事(3人×1日)保温工事(1人1日) |
施工費用 | 70万円 |
朝一の蒸気送気時、工場末端にてスチームハンマーが発生しているとのご相談を受け現場を確認しました。
現地を確認した結果、末端の配管で門型になっておりドレンが抜けない構造になっていました。
配管の変更を行うとともに、末端トラップの位置を変更することでドレンが抜けやすい状態に改善しました。
工事後、ドレンがきちんと排除されスチームハンマーは解消されました。
豊安工業でもスチームハンマーに関するお困りごと解決をサポートしています。ここからはよくある質問を紹介します。参考にしてみてくださいね。
よくある質問
徐々に悪化するよりも、突然発生する場合がほとんどです。大規模な場合は、配管や建物が揺れるほどの衝撃が起こることもあります。
配管、電磁弁や電動弁などの機器類、バルブ、フランジ、継手などが衝撃で破壊される恐れがあります。もし破壊されると、大量の蒸気や高温ドレンが噴出し、大変危険です。また、エネルギーロスにもつながってしまいます。
寒暖差が激しい地域で、配管に大きな高低差がある箇所では特に注意が必要です。あらかじめ対策をしておきましょう。
自動弁には「電磁弁」と「電動弁」の2種類があります。
電磁弁は一瞬で開くため、小口径の配管、かつスチームハンマーが発生しにくい環境にしか使いません。
電動弁は20秒程度かけてゆっくりと開くものが多いですが、未然防止の角度を上げるには、解放・維持のスケジュールを細かく設定できる自動送気システムがおすすめです。
配管内で非常に急激な「バン」という打撃音や「ガタンガタン」「ドン」という響きとして聞こえることが一般的です。この音は、配管やバルブが叩かれるかのような鋭い金属音です。
徐々に悪化するよりも、突然発生する場合がほとんどです。
大きな衝撃音の場合は危険です。
放置して改善されることはないので、専門業者に相談しましょう。
愛知県西三河地区の方は、こちらからご相談ください。
スチームハンマー(ウォーターハンマー)は対策しておくことが大切
施工までの流れをご紹介
ここからは豊安工業がスチームハンマー対策をする場合の流れを紹介します。
1.配管の現状調査
現地におうかがいし配管の調査をして、スチームハンマーが発生しやすい箇所を予測します。もし、起きてしまった場合は、発生個所を調査します。
2.改善提案
配管の再構築や、スチームトラップの見直しなど、スチームハンマー再発防止のご提案をします。
3.施工
ご要望をもとに施工します。状況によってはボイラーを停止していただくこともあります。
お役立ち資料ダウンロード
工場ペディア編集部からのメッセージ
危険性が高いスチームハンマー(ウォーターハンマー)
打撃音はなくならないので、早めに対策を
スチームハンマーは突然発生する、危険性の高い現象です。
本当に起こるか分からないからといって対策をしないと、いざというときに大ダメージを受けてしまいます。また、音が小さくても、スチームハンマーを放置してしまうと、水撃音はますます大きくなる一方。なくなることはないので、もし起こってしまったら、すぐに対処したほうがいいでしょう。
この記事が、現場の環境を少しでも改善したい、というあなたの思いを実現するヒントになれば幸いです。
この記事を監修した人
桐山 直也
豊安工業株式会社 メンテナンス部
資格:一級ボイラー技士、ボイラー整備士
得意分野:ボイラーメンテナンス全般
ボイラーメンテナンスの全般を得意とする専門家として業界に貢献してきた。知識はボイラー、蒸気、熱関連の領域に深く及び、この領域の専門知識を基にして、工業系、食品系、リネン、個人商店等、幅広いお客様の対応を行っている。