クーリングタワー(冷却塔)の設備更新とレイアウト変更でメンテナンス性が向上し、清掃・整備コスト削減と省エネができた事例

クーリングタワー(冷却塔)は冷却水の水管の清掃と管理が非常に重要な装置です。
管理を怠ると水質悪化でスライムやスケールといった障害が発生して冷却効率が悪くなり、その結果、電気代などの運用コストアップやシステム停止につながります。

うちは金属加工会社なので、鉄粉などの粉じんが冷却水に入ってしまうため整備コストがかかります。冷却塔点検時に危険な場所が多いため、作業員の安全も考えたいのですが。

クーリングタワーのレイアウト等を見直すことで、冷却効率やメンテナンス性を改善することができます。工場の形に合わせた工夫や、独自のアイデアが詰まった事例を紹介しますね。

目次

工事前は、梯子のみで、点検・整備作業は危険を伴うものでした。安全に点検・整備ができるように、手摺り付きの歩道や階段などを設置したいとのご要望がありました。

屋根の半分は外に解放されていますが、排気口が真上を向いていたため上部に温度の高い排気が溜まっていました。クーリングタワーは、上から下に水を流してファンで風を送って温度を下げるため、温度の高い空気が溜まると、冷却効率が悪くなります。

工場から鉄粉が出るため水質が悪化しやすく、通常の充填材をネトロンパイプ仕様にして使用していましたが、冷却塔を重機で吊り上げて整備・清掃をしていたため、大きな負荷となっていました。

工事前と工事後のレイアウト図

工事前は、梯子のみで冷却塔の上は狭くて歩くのが難しく、整備・点検は危険が伴う作業でした。

工事後は、クーリングタワーの上部に上がる階段、上部には歩きやすいデッキを設置しました。どちらにも手摺りを付け、作業員が安全に作業できるようになりました。

3連型のクーリングタワーで内部が6つに分割されているため、中に入るネトロンパイプの長さも1/4に短縮でき、汚泥がついた状態での重量も軽くなり、取り出しやすくなりました。

分割することで汚れの状態に合わせて個別に管理できるため、清掃コストを大幅に削減することができました。

クーリングタワーの内部を横断できる通路を作り、点検口を両サイドに設置しました。これにより、整備・点検作業の効率時間を大幅に短縮することができました。

クーリングタワー内部の通路(左) 点検口(右)

下部架台を支える鉄の柱が錆びて経年劣化ていたため耐荷重計算をしたところ、追加で5本の支柱を入れないと強度が足りないことが判明しました。

鉄の柱を入れると以前の柱と同じように錆びるため、塩ビの中に鉄の柱を入れてコンクリートを流し込み、オーダーメイドの錆びない支柱を作りました。

これまでは排気口が上に向いていたため屋根の内側に温度の高い空気が溜まっていました。排気口を45度エルボで角度調整することで、排気熱の滞留防止をすることができました。

また、角度をつけることにより作業員に直接排気が当たりにくくなり、真夏の整備作業環境の改善や安全対策にもつながりました。

クーリングタワーの上部水槽には、ゴミが入らないように5mmくらいの穴が空いていますが、屋外にあるのですぐに詰まってしまいます。

実はここに、スーパーボールやゴルフボールを入れるとゴミが詰まらなくなるんです。水が流れた時にボールが衝突して動き続けることで水を攪拌し、ゴミが沈殿しにくくなるためです。

先輩社員から引き継いだ遊び心のある解決方法ですが、効果は絶大です。

上部水槽にスーパーボールを入れた様子

このように、お困りごとに寄り添うことから生まれたユニークな解決方法がたくさんあります。
続いて、施工の様子もご紹介しますね。

施工管理者として、安全管理は重要な業務になります。高さは3〜4mあるので、足場を作り、墜落防止器具(安全帯)をつけて作業を行います。

クーリングタワーは通常のものより大きく、重機で解体できないため、人力で少しづつ切断しました。汚泥のついた重いネトロンパイプ2,000本を1本ずつ撤去している様子です。

解体した資材を運び出して下部架台が露出すると、鉄の柱が錆びて経年劣化しているのがわかりました。急遽、下部架台の耐荷重計算を行いました。

水を抜き洗浄した後に、下部架台を切断し、解体している様子です。

冷却塔の下部架台を設置している様子です。この後、5本の支柱を立てて、クーリングタワーをクレーンで設置し、一気に完成へと近づきます。

取り出したネトロンパイプ2,000本から、再利用できそうなものを選んで、高圧洗浄を行いました。1/3は再利用することができました。

高圧洗浄後のネトロンパイプを、3mから750㎜に切断。取り出しやすい大きさになるため、洗浄やメンテナンスが圧倒的に楽になります。

再利用できなかったメトロンパイプやFRPなどの混合物と汚泥は、私たちが代理で廃棄し、マニフェストを交付しました。分別・再利用することで、環境への配慮と、廃棄コストの削減につながりました。

お客様情報岐阜県 金属加工会社様
施工規模既設の冷却塔2台を撤去し、新規の冷却塔を1台設置。
工期7人×30日
施工費用3,000万円
整備コスト削減100万円/年
電気代削減120万円/年
CO2排出削減36tCO2/年

クーリングタワーの更新と冷却効率アップによる省エネ効果だけでなく、メンテナンス性アップと安全確保で、作業員の負担も大幅に改善!

クーリングタワーの水を抜く工程以降は工場を停止している時しかできないため、生産ラインに影響のない時期にできるだけ短期間で工事を進める必要がありました。また、気温が高い夏になると水が冷えにくくなるため、工事ができる季節も限定されていました。

他のクーリングタワーの稼働で賄える時期に、段取りよく短期間で完工してもらったので、助かりました。

階段、手すり、歩廊デッキを取り付けたことで日常点検の安全性が向上しました。また、クーリングタワーの架台、歩廊デッキのメッキ処理の仕上りが良く、見栄えがとても良くなりました。

これまでは、整備するためにクーリングタワー全体を持ち上げる必要があり、重機を使用していました。レイアウト変更後は、クーリングタワーを持ち上げる必要がなくなり、整備コスト削減になりました。

クーリングタワー(冷却塔)の入れ替え時には
メンテナンス性の向上が大切

工場の老朽化に伴う設備の入れ替えや、カーボンニュートラル(CO2削減)対策でお悩みの設備担当者様は多いことでしょう。

私たちは設備メーカーではないため、工場全体が長く安全に稼働できるように、中立の立場でのご提案をすることができます。

大切なのは更新する機器の選定だけではありません。設備レイアウトを工夫することで、さらなる省エネ、CO2削減、安全対策、メンテナンス性の向上など、様々な課題を解決することができます。

人手不足、働き方改革が進む中、作業員の労働環境を改善することも大切です。クーリングタワーは管理を怠ると水質悪化が起こり、冷却効率が悪くなるため、日々の整備は作業者の大きな負担になっています。メンテナンス性を向上させ、安全・快適な作業環境を整えることで、作業者への負担が減り、生産性の向上に貢献することができます。

この記事を監修した人

石井 建作

石井 建作

豊安工業株式会社 第1プラント管理部
資格:エネルギー管理士、管工事施工管理技士1級、給水装置工事主任技術者、消防設備士甲種1類
得意分野:給排水衛生設備工事

給排水設備、冷却水設備、エアー設備、蒸気設備等の知識に精通。また、プラントにおける熱エネルギー管理について社内やお客様向けの勉強会を行い、教育活動にも携わっている。専門分野は、クーリングタワー、チラー、ポンプ等の冷却水設備工事。主に三河地区の自動車部品工場等の製造業の給排水設備工事及び省エネ・CO₂削減提案を手がけている。

工場ペディア監修

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