ボイラ運転の省エネは台数制御と運転制御がカギ! 不要な発停を減らす見直し方と3つの改善事例 

生産量が以前より減っているのに、ボイラの燃料使用量が思ったほど下がりません。蒸気をあまり使っていない時間帯でも複数台が動いており、起動と停止も多いのが気になっています。

ボイラ本体の効率だけでなく、運転の仕方を確認したほうがよさそうです。蒸気負荷に対して台数制御や起動・停止条件が合っていないと、不要な発停や待機運転が増えることがあります!

ボイラを更新しなくても、今の設備の動かし方を見直す余地があるということですね。台数を減らせばよい、という単純な話でもなさそうですね。

その通りです!大切なのは台数を減らすことではなく、実際の蒸気負荷に合わせて必要なボイラを適切なタイミングで動かすことです。生産状況を確認しながら、増減台条件や遅延時間、発停条件を見直していきます!

目次

ボイラの省エネというと、高効率機への更新や燃焼効率の改善を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、ボイラ本体の効率が良くても、実際の蒸気使用量と運転方法が合っていなければ、エネルギーの無駄は残ります。 

特に注意したいのが、複数台のボイラを使い、時間帯や生産品によって蒸気使用量が大きく変化する工場です。設備導入時には適切だった設定でも、生産量や設備構成が変われば現在の運転には合わなくなります。 

よく見られる困りごとは次の通りです。 

  • 蒸気使用量が少ないのに複数台が運転している
     増減台条件が現在の負荷に合わず、低負荷時にも必要以上のボイラが動いていることがあります。  
  • 起動と停止を短時間に繰り返す 
     発停条件や遅延時間が負荷変動に合っていないと、停止した直後に再び起動する動きが増えます。
  • 生産量が減ったのに燃料使用量があまり下がらない 
     待機運転や不要な複数台運転が残り、蒸気使用量の低下がそのまま燃料削減につながっていない場合があります。
  • 蒸気圧力が安定しない 
     増台や減台のタイミングが合わないと、負荷変動にボイラが追従できず、生産設備の加熱条件にも影響します。
  • 発停回数が増え、機器への負担が大きくなる 
     発停時にはパージを伴うため、回数が増えるほど熱損失(パージロス)が増え、バーナーやポンプ、制御機器の動作回数も増えます。

ここで注意したいのが、「運転台数を減らせば省エネになる」とは限らないことです!

重要なのは、何台運転しているかだけでなく、発停をどれだけ無駄なく行えているかです。
負荷の山谷まで確認して判断します!

急なピーク負荷にすぐ対応するため、あえて低燃焼で温態を維持する運転もあります。 そのため、待機しているボイラが無駄かどうかの判断は慎重に行う必要があります。 
ボイラ効率と運転効率は分けて考え、実運転に立ち会って設定を詰めることが重要です

地域:愛知県
業種:化学製造業
工場規模:大企業
工期・体制:3人・2日
予算:180万円
施工規模:中規模工事

問題点

蒸気負荷に対して各ボイラがうまく連動せず、必要以上の運転や待機、起動・停止が発生していました。複数台のボイラを備えていても、実際の蒸気使用量に応じて運転台数を調整できなければ、低負荷時にも余分な運転が残ります。燃料使用量だけでなく、発停による機器への負担も課題となっていました。 

改善内容

対策として台数制御装置を導入しました。蒸気負荷に応じて必要なボイラを運転させる仕組みを設けることで、これまで単独で運転していたボイラがその時々の蒸気負荷に合わせて必要な台数を動かす制御に切り替えたことが改善のポイントです。 

お客様の声

改善後は不要なボイラの運転が減り、燃料使用量と発停回数の低減につながりました。設備更新そのものではなく、複数台のボイラをどのように組み合わせて運転するかを見直したことで、既設設備を活かしながら運転効率を改善できたので良かったです。 

地域:愛知県
業種:自動車部品製造業
工場規模:中小企業
工期・体制:1人・3日
予算:30万円 
施工規模:小規模工事

問題点

不要な起動と停止が繰り返され、ボイラの発停回数が多くなっていました。ボイラが停止しても蒸気負荷がすぐに上昇すれば再起動するため、条件が実際の負荷変動に合っていないと落ち着かない運転になります。発停が増えることで、パージによるエネルギー損失や機器への負担も増えていました。 

改善内容

実際の運転に3日間立ち会い、蒸気圧力、負荷変動、各ボイラの動きを確認しました。そのうえで、起動・停止条件、増台・減台条件、遅延時間を実運転に合わせて調整しました。机上の設定値だけで判断せず、生産中のボイラの動きを確認しながら条件を決めたことが重要なポイントです。 

お客様の声

調整後は不要な発停や増減台が抑えられ、ボイラ運転が安定しました。その結果、起動時などに行われるパージに伴う無駄なエネルギー消費が減り、頻繁な発停による機器への負担も低減しています。大きな設備更新を行わず、既設設備の設定見直しで改善した事が良かったです。 

地域:愛知県
業種:繊維製造業
工場規模:中小企業
工期・体制:1人・2日
予算:20万円 
施工規模:小規模工事

問題点

生産設備の増設や撤去によって、設備導入当初から蒸気使用量と負荷変動が変わっていました。一方、ボイラの運転条件は以前の状態を基準にしたままで、現在の負荷に合わない起動・停止や増減台が発生。生産設備側は変化していても、ボイラ側の制御設定が追従していない状態でした。 

改善内容

実際の生産運転に立ち会い、増台・減台条件と遅延時間を現在の生産状況に合わせて調整しました。設備導入時の設定をそのまま使い続けるのではなく、設備の増設・撤去などで蒸気負荷が変わったタイミングに合わせて制御設定も見直すことで、現在の運転に適した状態へ整えました。 

お客様の声

調整後は蒸気負荷に応じてボイラが自動的に増減台するようになり、蒸気圧力が安定しました。また、負荷が下がった後も続いていた不要な運転や発停が抑えられ、現在の生産状況に合わせた安定運転につながっています。 

3つの事例に共通するのは、「省エネ設定を一度決めれば終わり」と考えていないことです。 

ボイラは、生産量や使用設備、曜日、時間帯、季節によって蒸気負荷が変わります。ある日の昼間にはちょうどよい設定でも、夜間や別の製品を生産する日には合わないことがあります。 
改善を長続きさせるためには、次の点が重要です。 

  • 設定変更の前に、通常負荷・低負荷・ピーク負荷まで確認する 
    一つの時間帯だけを見て設定すると、別の生産条件で運転が不安定になることがあります。 
  • 実際の運転に立ち会ってボイラの動きを確認する 
    蒸気圧力だけでなく、起動、停止、増台、減台がどのタイミングで起きているかを見ます。 
  • 発停回数と運転時間を台帳で残す 
    燃料使用量だけでは見えにくい運転の変化を追いやすくなります。 
  • 生産設備を増設・撤去したら制御設定も見直す 
    蒸気を使う側が変われば、適切なボイラ運転条件も変わります。 
  • 待機運転をすべて無駄と判断しない 
    ピーク負荷への応答や蒸気圧力維持を目的として、温態維持が必要な場合があります。 
  • 運転台数の少なさではなく、不要な発停の少なさを見る 
    省エネでは「何台止めたか」だけでなく、「必要なときに必要な台数が安定して動いているか」が大切です。 

一度の立会いだけで設定を決めてしまうと、その日は問題なくても、曜日や時間帯、生産品が変わった際にうまく運転しないことがあります。 

そのため、お客様へのヒアリングと実運転の確認を組み合わせ、生産条件が変わるたびに運転条件を見直すことが成功につながります。 

また、今回の事例では、ボイラの燃焼だけでなく運転制御まで設備全体を見て判断し、既設設備を活かしながら改善方法を考えていることも共通しています。新しい設備を入れる前に、現在の設備の動きに改善の余地がないかを見ることも大切です。 

Q
蒸気使用量が少ないのに複数台のボイラが動いています。問題無いでしょうか?
A

台数制御や増減台条件が、現在の蒸気負荷に合っていないことが考えられます。 
まずは各ボイラの運転状態と蒸気圧力、負荷の変化を確認します。低負荷時にも複数台運転が続いている場合は、台数制御の導入や増減台条件の見直しを検討します。 

Q
ボイラの起動と停止が多い場合、どうすれば良いでしょうか?
A

起動・停止圧力、増減台条件、遅延時間と、実際の蒸気負荷の動きを照らし合わせます。発停が多いからといって、設定値をすぐ変更するのは避けたいところです。通常負荷だけでなく、低負荷時やピーク負荷時の動きまで確認したうえでの調整が必要です。

Q
生産量が減ったのに燃料使用量があまり減らないのはなぜですか?
A

低負荷時にも不要な複数台運転や待機運転が残っていることが考えられます。
蒸気使用量だけを見るのではなく、各ボイラの運転時間や発停回数も合わせて確認します。生産条件が以前と変わっている場合は、現在の負荷に合わせて台数制御や運転条件を見直すことが重要です。  

Q
ボイラを1台でも多く止めれば、省エネになりますか?
A

必ずしもそうではありません。 
運転台数を減らしすぎると、負荷上昇時に蒸気圧力が下がったり、停止したボイラを頻繁に再起動したりすることがあります。省エネでは、運転台数そのものよりも、負荷に応じた安定運転と不要な発停の削減を重視します。 

Q
設定を一度調整すれば、その後は触らなくてもよいですか?
A

蒸気負荷が変われば、再度見直す必要があります。 
製品構成、生産量、設備の増設・撤去などによって蒸気負荷は変化します。運転時間と発停回数を記録し、以前と動きが変わってきたら、現在の生産状況と制御設定が合っているかを確認すると安心です。 

ボイラの省エネは「機器の効率」だけでなく、毎日の動かし方を見直すことから始まります

ボイラの省エネでは、高効率な設備への更新に目が向きがちです。しかし、現在使っている設備でも、蒸気負荷と運転条件が合っていなければ改善の余地があります。特に生産量や設備構成が変わった工場では、導入当初の設定が今の使い方に合っているか、一度確認してみる価値があります。 

大切なのは、運転台数をむやみに減らすことではありません。発停回数や運転時間を記録し、実際の生産状況を見ながら継続的に設定を見直すことです。こうした日々の改善は燃料や電力の無駄を抑えるだけでなく、機器への負担軽減にもつながります。 

設備を長く安定して使いながら省エネを進めることは、CO2削減やカーボンニュートラルへの取り組みにもつながります。まずは「今、ボイラがどのように動いているか」を知るところから始めてみましょう。 

この記事を監修した人

牧原 大嗣

牧原 大嗣

豊安工業株式会社 メンテナンス部メンテ課 係長
資格:一級ボイラー技士、ボイラー整備士、1級管工事施工管理技士、第二種電気工事士
得意分野:ボイラー、燃焼機器全般

メンテナンス部でボイラーや圧力容器の定期点検業務、配管工事に従事。
食品工場や化学工場などの多様な現場で経験を積み、ボイラーや燃焼機器の整備・修理において豊富な知見を有する。