最近、蒸気設備のエネルギー効率が落ちているようで、スチームトラップの故障が原因かもしれないと思っています。
ただ、診断方法がよく分からなくて困っています…

それは注意が必要ですね!
スチームトラップが正常に作動していないと、蒸気が無駄に漏れたり、ウォーターハンマー(スチームハンマー)による配管破損のリスクが出てきます。診断は定期的に行うことが理想です。

やはりそうなんですね。確かに、故障の兆候らしい音も聞こえていました!
早めに診断して対処しようと思います。

それは良い判断だと思います。
スチームトラップの診断は蒸気ロスの防止につながるので、省エネ効果も期待できますよ!

目次

スチームトラップの故障は、工場設備に大きな影響を与えます。放置すると重大なトラブルにつながるだけでなく、蒸気の無駄によるエネルギー損失も発生してしまいます。

スチームトラップの故障2つのタイプ

  • ドレンが流れない
    ・配管内に水が滞留し、ウォーターハンマー(スチームハンマー)が発生する恐れがある
    ・その衝撃により、配管破損や周辺装置の損傷につながる可能性がある
  • 蒸気が漏れ続ける
    ・常に蒸気が吹き出し、エネルギーの無駄な消費が発生する
    ・コスト面で不利になるだけではなく、環境負荷にも悪影響を与える

スチームトラップ診断は、これらのトラブルを防ぎ、設備を安全かつ効率よく運用するための重要な管理項目といえます。

スチームトラップを正しく診断するためには、まず装置の仕組みを理解しておくことが欠かせません。

スチームトラップは、蒸気ラインの中で蒸気とドレン(凝縮水)を効率よく分離するために使用される装置です。作動の仕組みは、温度差や圧力差といった熱・流体の性質を利用しており、蒸気は通過させつつ、発生したドレンのみを排出します。

タイプそれぞれ作動原理や適した使用環境が異なります。

スチームトラップのタイプ

  • 機械式
  • フリーフロート式
    中の浮き球が浮力で上下して動きドレンの排出をする構造で省エネ効果が高い、取付け姿勢水平取付のみ
  • バケット式
    中のバケットが浮力で上下に動きドレンを排出する構造で省エネ効果がフリーフロートには劣るが高く、取付け姿勢水平取付のみ
  • 熱力学式
  • ディスク式
    圧力を利用してドレンを排出する構造で、取付け姿勢水平垂直
  • 温調式
  • バイメタル式
    温度差で伸縮するバイメタルを利用してドレンを排出する構造で、取付け姿勢水平垂直
  • バランスプレッシャ式
    沸点が水より低くなるように特殊な液体と水の混合物を混ぜたカプセルが周囲の蒸気圧によって作動する構造で、取付け姿勢水平垂直
スチームトラップタイプ

こうした特徴を正しく理解しておくことで、実際の診断において不具合の判断がしやすくなり、より精度の高い管理につながります!

スチームトラップの不具合をそのままにしておくと、思わぬトラブルに発展することがあります。ここでは、実際のトラブル事例をもとに、工場設備へどのような影響が出るのかを見ていきます。

ドレンが適切に排出されない状態が続くと、配管内に溜まった水が勢いよく移動し、ウォーターハンマー(スチームハンマー)を起こすことがあります
この衝撃によって、配管の破損やバルブの故障が発生し、場合によっては生産停止につながります。

一方で、スチームトラップから蒸気が漏れ続けている場合は、大きなエネルギーロスが発生します。たった一つのトラップでも、年間で数十万円規模の蒸気ロスに至るケースもあり、こうしたリスクを避けるためには、早期発見を目的とした診断と定期的な点検が欠かせません。

トラップ診断にはいくつかの手法があり、精度の高いアプローチが求められます。

スチームトラップの診断は、音や温度の変化を利用して状態を確認するのが一般的です。専用の超音波診断機や温度センサーを使用すれば、配管を外すことなくトラップの作動状態を把握できます。

こうした方法は、現場での作業負担を抑えながら、点検の精度と効率を高めるのに効果的です。

異常が確認された場合は、速やかに交換作業へ移行することで、トラブルの拡大を防ぐことができます。診断と対策を一連の流れとして実施することが、安定した蒸気設備の運用につながります。

トラップマン

写真の診断機器「トラップマン」は、蒸気が流れている際に使用して診断します。
スチームトラップではこの様な専用の機器を使い、超音波、熱を感知して診断します

愛知県 自動車部品工場様

問題点

老朽化したスチームトラップから蒸気が漏れ続けており、そのまま年間数十万円規模のロスにつながっていました。

改善内容

専用診断機器を用いて不良トラップを迅速に特定し、交換工事を実施。改善後は蒸気ロスがほぼ発生しない状態となり、2~4年ほどで投資回収が見込める結果となりました。

スチームトラップ診断と適切な交換工事は、設備負荷も少なく、省エネ効果を得やすい改善施策のひとつといえます。

お客様の声

スチームトラップの点検をして年間の蒸気使用量が削減され
大変満足しています!

トラップマンでの測定
Q
スチームトラップはどれくらいの頻度で診断すべきですか?
A

最低でも年1回の診断を推奨します。特に蒸気使用量の多い設備では半年に1回が理想です。

Q
診断には工場を止める必要がありますか?
A

専用の機器を使えば、配管を外さず稼働中でも診断が可能です。

Q
スチームトラップの交換工事にどれくらい時間がかかりますか?
A

対象機種や設置場所にもよりますが、1基あたり30〜60分程度で対応可能です。

省エネと安全性の両立が重要

スチームトラップ診断は、蒸気設備の省エネを実現するための有効なアプローチです。
蒸気の漏れやドレン詰まりといった不具合は、見えにくい形でエネルギーを無駄にしていることが多く、放置すれば光熱費の増大や設備トラブルにつながります。

定期的な診断を行い、劣化や故障したトラップを早期に発見・交換することで、蒸気を効率的に活用できる状態を保つことが可能です。結果として、生産コストの削減や設備の安定稼働につながり、工場全体のエネルギー管理レベルの向上が期待できます。

設備改善を「省エネの視点」から見直す第一歩として、まずはスチームトラップ診断に取り組んでみてはいかがでしょうか。

この記事を監修した人

仲山 佳丈

仲山 佳丈

豊安工業株式会社 プラント管理部1課 係長
資格:1級管工事施工管理技士、給水装置工事主任技術者、第二種電気工事士
得意分野:プラント配管工事

配管設備の営業や施工管理を中心に、自動車部品製造工場での改修・修繕・改善工事を多く手掛けてきた。配管部材や機器の特性、仕組みに精通し、適切な選定と設計で高い評価を得ている。また、課内で1級管工事施工管理技士の勉強会を主導するなど、後進育成にも取り組んでいる。

工場ペディア監修

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