
配管の支持金物を設置したいのですが、どのアンカーボルトを使えばいいか迷っています。
既設の工場なので後施工になると思うのですが…

既設工場なら後施工アンカーが基本ですが、施工場所や配管の重量、周囲環境によって適切な種類を選ぶ必要がありますよ!

なるほど、種類だけじゃなくて現場条件も影響するんですね。勉強になります!

今回はアンカーボルトの基礎から、選定時の注意点、現場での実例まで分かりやすくご紹介します!
アンカーボルト選定はなぜ重要?
アンカーボルトの選定を誤ると、配管や設備の転倒、脱落といった重大な事故につながります。
現場環境に合わせた固定方法の選定が必要
後施工アンカーの選定ミスが保全工数や安全性に直結
支持金物の固定方法は「梁に挟み込み式」「梁に溶接やビス止め」「梁がない場所の場合アンカー固定」の3種類があります。
梁の強度低下の関係で、梁に直接溶接をすることや穴を空けてビス止めをする方法は現在では非推奨です。

例えば、梁から固定が取れない現場ではコンクリートへのアンカー固定が最も汎用的で安全性も高く、多くの現場で採用されています。
今回は支持金物の中の「アンカー」について詳しく解説をしていきます!
アンカーボルトの種類と特徴を理解しよう
アンカーボルトには大きく分けて「先施工アンカー」と「後施工アンカー」があり、それぞれの特徴や使用タイミングを理解することが必要です。
先施工アンカーと後施工アンカーの違いと代表例
- 先施工アンカー
コンクリート打設前に設置する必要があり、主に「インサートアンカー」「J型アンカー」などが使われる - 後施工アンカー
施工後のコンクリートに設置可能、種類が多く、「接着系」「拡張式」「アンダーカット式」「ネジ固定式アンカー」などが代表
アンカー選定の注意点とは?
アンカーを選定する際には、種類だけでなく使用するボルトの太さ、引張荷重、施工条件を総合的に判断する必要があり、現場の実情に合わない選定は、施工不良やトラブルの元になります!
引張荷重・せん断強度・環境の3要素
- 引張荷重…アンダーカット式>接着系>拡張式>ネジ固定式アンカーの順に強度があります
- せん断強度…使用するボルト径に依存、荷重計算が必要です
- 環境条件…屋内、屋外、湿気、設置面の材質などに注意し、施工時の姿勢(横向き・天井向き)もポイントになります
- ①接着系アンカー
強度が高く恒久施工として使われ、施工後接着剤の硬化まで養生期間が必要だが、拡張式に比べコンクリートの割れなどが起こりにくい - ②アンダーカット式
拡張式アンカーの一種で他の拡張式に比べ引抜強度が高いため、現在建設現場でメインで使用されている - ③オスアンカー(拡張式)
一番メジャーなアンカー、施工を簡単で今でも多くの現場で使用されている - ④メスアンカー(拡張式)
工場などのレイアウト変更が多い場所に適しており、施工後にアンカーの頭が施工面から出ないためレイアウト変更後に床面がフラットになりやすい。そのためアンカーに人がつまづいて転ぶ危険性がない - ⑤ネジ固定式アンカー
引抜強度が低くほぼ使用されないが、施工が簡単である

適切なアンカーを選定するための実践ポイント
用途・荷重・施工環境を的確に把握し、現場に合ったアンカーを選ぶことで、安全かつ効率的な施工が可能になります。
「汎用品をとりあえず使う」ではなく現場に応じた選定・見極め
現場ごとの具体例
- レイアウト変更が多い現場
…アンダーカット式や拡張式の「メネジアンカー」が有効
理由:オネジだとレイアウト変更後に頭が出てつまずく危険がある - 天井への設置
…接着系アンカーは不向きである
理由:接着硬化前に重力で抜け落ちるリスクあり - 重心の高い設備を支えるとき
…引張荷重とせん断力の両方に注意、ボルト径の選定が重要 - 施工場所の環境
…屋外などは錆びない材質のものを選定する
現場に合ったアンカー選定で安全に設置できた実例
基礎が小さくても接着系アンカーで冷却等の設置を可能に!
問題点
ある既設工場では、過去コンクリートが割れてしまい固定が困難になってしまった経験があると聞きました。そのため、新しい設備を設置する方法として、後施工アンカーを使用していました。
改善内容
上に置かれている設備が基礎をはみ出して設置をする必要があり、重量を支えるために強度面が問題でした。
そのため、複数の接着系アンカーを使用し固定を行いました。
お客様の声
設置スペースに対して基礎が小さいことから設置が難しいとのことでしたが、基礎から鋼材を張り出して施工をしてくれる工夫をしてもらい、冷却塔の設置が可能になりました。


今現在施工から5年ほど経過をしていますが、大きな問題もなく大変満足しています!
よくある質問
メーカーの仕様書やカタログに記載があります。施工場所の荷重条件に合うかを確認しましょう。
アンカーの埋設深さが不足する可能性があるため、浅埋め対応可能な製品や別の固定方法を検討します。
壁面や床面で振動や衝撃が少ない場所に適しています。耐震設計を伴う場合は不向きなこともあります。
工場ペディア編集部からのメッセージ
現場に即した実用的なアンカー選定を
アンカーボルトの選定は、工場の設備工事の品質と安全性を左右する重要な要素です。
選定を誤ると、施工後にトラブルが発生し、再施工や保全対応に余計な手間と時間がかかるケースもあります。
メネジ式アンカーや再利用可能な部材を上手く取り入れることで、将来的なレイアウト変更や設備の移設にも柔軟に対応できる設計ができ、現場の運用に合わせた“無理のない選定”が、結果として工数削減や長期的なコストの抑制につながるのです。
アンカー選定を「ただの部材選び」で終わらせず、現場環境・用途・将来の使い方まで見据えた判断をすることが、トラブルのない施工や安定した稼働に結びつきます!

この記事を監修した人

仲山 佳丈
豊安工業株式会社 プラント管理部1課 係長
資格:1級管工事施工管理技士、給水装置工事主任技術者、第二種電気工事士
得意分野:プラント配管工事
配管設備の営業や施工管理を中心に、自動車部品製造工場での改修・修繕・改善工事を多く手掛けてきた。配管部材や機器の特性、仕組みに精通し、適切な選定と設計で高い評価を得ている。また、課内で1級管工事施工管理技士の勉強会を主導するなど、後進育成にも取り組んでいる。