
夏になるとエアーに水が混じって、製品の品質不良が発生してしまうんです。何か対策ってありますか?

それはエアードレン対策を強化する必要がありそうですね。
送気元や管路、供給部での適切な機器の選定と配置がポイントです。

なるほど、場所ごとに対策があるんですね。エアードライヤーやドレントラップが重要ってことですか?

それも大切です。品質基準に応じたエアー清浄化機器を適材適所で使用すれば、さらなる製品品質の安定化やコストカットにもつながりますよ。
こんな時は要注意!?
エアードレン対策チェックリスト
- 夏場になると、エアーに水分が混入する
- 年中、エアーに水分が混入する
- 特定の場所だけエアードレンが発生する
- エアーの品質による製品不良がある
- エアーを使用する機器がよく壊れる
エアードレンのメカニズムとリスク
エアードレンはなぜ発生する?
エアー配管内に発生するドレンは年中発生しますが、特に夏場の湿度上昇や、空調環境の温度差が大きい場所ではドレンが発生しやすくなります。 また、圧縮エアーは通常、フィルターやドライヤーを通して清浄化されますが、能力不足やメンテナンス不足でも水滴が混入しやすくなります。
ただし、ドレンは配管環境や換気状況など、外的要因が複雑に絡んで発生します。見落としがちな問題に早期に気づくことが、トラブルを未然に防ぐ鍵です。
エアードレンの放置はリスクの元
ドレンが混入した圧縮エアーは、錆などの製品不良・品質低下を引き起こす原因となります。
また、機械設備にドレンが入り込むと、錆・腐食・漏電などで突発的な機器停止などを引き起こし、年間で数百万以上の規模の損失に発展することもあります。
ポイントを押さえて圧縮エアーの品質を改善!
【ポイント1】送気元は用途に応じた品質基準に合わせる!
- ①適正な換気ができていますか?
- ②エアードライヤーの能力は適していますか?
- ③エアードライヤーやドレントラップは正常に動いていますか?
【ポイント2】送気先は要所で個別対策を!
- ④送気先と送気元の環境温度差が大きくないですか?
- ⑤空調機の送風口付近を通っていませんか?
- ⑥管路にも溜まったドレンを排出する機器やバルブを付けていますか?
- ⑦要所に応じた補填機器は付いていますか?


エアードレンは、発生しにくくすることが大切なんですね。

せっかくドレンの混入を抑制しても、エアーの品質自体が管理されていなければ、粒子や油分の混入が他のトラブルを引き起こします。ドレン対策とあわせて、用途に応じてエアーの等級を見直しましょう。
圧縮エアーの品質が製品品質を左右する
圧縮エアーの品質基準と用途別の等級とは
圧縮エアーには、粒子、水分、オイルの3項目に応じた等級が存在します。
これらの等級は、使用用途に応じて異なり、例えば食品工業や電子部品の生産に使用する圧縮エアーは、より高い清浄度が求められます。
等級表

⽤途と品質例

エアー等級の読み方と代表例
エアー品質の等級は、「粒子:水分:オイル」の順に表記されます。
例えば、[1:4:1]は、粒子が等級1、水分が等級4、オイルが等級1という意味です。
等級1は-70 ℃以下、等級4は+3 ℃以下といったように、数字が小さいほど高純度。
食品・医薬・電子部品では等級1~2を要求されることが多い一方、エアブローなどの簡易用途では[4:8:4]程度でも済みます。

用途に応じた適正値を設定しないと、過剰投資やトラブル発生原因にもなります。

一律だと思っていました。製品ラインごとに見直しが必要ですね。
最適なエアー品質を確保するために
おすすめの機器一覧
送気元

冷凍式エアードライヤー
メインラインフィルターなど
管路

ウォーターセパレーター
ドレントラップなど
供給部

ミストフィルター
膜式エアードライヤー
ヒートレスドライヤーなど

これらの機器をエアー品質の等級を基準に選定し、適切に設置することで、過不足がなく、最適なエアー品質を確保することができます。
よくある質問
使用頻度や環境によって異なりますが、水分が再凝縮しやすい配管途中や末端には設置が望ましいです。
月1回以上の点検を推奨します。特に湿度の高い時期は、作動不良が起きやすくなります。
国際規格である、ISO8573-1に基づいています。
使用目的を明確にし、それに合った等級を選ぶ必要があります。専門業者による診断・提案を活用するのが安心です。
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工場ペディア編集部からのメッセージ
エアーは見えないユーティリティ
エアードレンの問題は、気温や湿度、設備環境など多くの要素が関係しており、対策を間違えてしまうと、製品不良や設備故障が繰り返される原因になります。今回ご紹介したように、エアーの使用箇所ごとに必要な品質等級や機器の選定を正しく行うことで、安定した工場運営へつなげることができます。
エアーは“見えないユーティリティ”です。
管理次第では、省エネやカーボンニュートラルなどの環境対策にも効果的です。
この記事が今後の運用改善やトラブル予防の一助となれば幸いです。

この記事を監修した人

高橋 秀文
豊安工業株式会社 設計部 部長
資格:一級管工事施工管理技士、給水装置工事主任技術者
得意分野:プラント配管設備全般
1996年の入社以来、エアーや冷却水、蒸気など多岐にわたる配管工事を手掛けてきた。現状調査から設計、積算、施工管理まで幅広い業務に対応し、自動車関連工場を中心に多様な規模の案件で実績を重ねている。エネルギー工学科出身の知識を活かし、効率的かつ精密な設計を得意としている。