
生産ラインが停止していても、コンプレッサーの稼働が止まらないんです。エアー漏れって、そんなに影響があるものなんですか?

はい。エアー漏れは“見えないコスト”を生む大きな要因です。ラインが止まっていても、供給バルブを開けたままだと漏れが続き、コンプレッサーが無駄に稼働してしまうんですよ。

なるほど。バルブの管理次第で節電につながるんですね。場所によっては高所で操作しづらいところもあるんですが、そういう場合はどうすればいいんでしょう?

そうですね。供給先を整理して、ライン単位でエアーを止められる仕組みにすれば、現場でも操作が簡単になりますし、CO₂削減にもつながりますよ。
停止ラインのエアー漏れが無駄な電力を生む理由とは?
非稼働ラインからのエアー漏れは、工場におけるエネルギーロスの代表的な要因のひとつです。
供給バルブの閉止によってエアー漏れを防ぐ方法と、それによって得られる具体的な省エネ効果について紹介していきます。
エアー漏れは「気づかない損失」になりやすい
工場のエアー配管は、長年使用を続けることで、継手部分や老朽化した機器などから少しずつ漏れが生じるようになります。
このエアー漏れは、小さな音すら出さず、気づかれにくいために放置されがちな問題です。
その結果、ラインが停止していてもコンプレッサーは稼働し続け、気づかないうちに多くの電力が無駄に消費されているケースも少なくありません。
エアー漏れの基本と仕組み
エアー漏れの正体を把握することで、現場での具体的な対策が立てやすくなります。
まずは、エアー供給の仕組みとコンプレッサーの稼働状況との関係を見直してみましょう。
エアー供給系統とコンプレッサーの関係
コンプレッサーは、工場内のあらゆる機器に圧縮空気を供給する重要な設備です。
そのため、バルブが開いたままの状態では、エアーは止まることなく供給され続けます。
もし、停止中のラインにあるバルブが開放されたままだと、そこから漏れ続けるエアーを補うために、コンプレッサーは休まず稼働し続けることになります。
これが、無駄な電力消費を引き起こす原因となるのです。
よくある問題と見過ごされるポイント
現場でエアー漏れ対策が進まない理由は、「見えない・気づかない・面倒くさい」に集約されます。日常の作業に追われる中で見過ごされがちなリスクを洗い出しましょう。
高所のバルブ操作が現場改善のネックに
工場の設備によっては、以下のような理由でバルブの操作が困難な場合があります。
- 供給バルブが高所(例:天井付近)や装置の背面に設置されている
- 作業者が脚立や高所作業台を使用しなければならない
- 設備の配置上、バルブの位置が視認しにくく、アクセスしづらい
運用上の課題も生じやすくなる
- バルブを閉めるのが面倒で、「閉め忘れ」や「常時開放」になりやすい
- 結果として、非稼働ラインにもエアーが供給され続ける
- コンプレッサーが不必要に稼働し、エネルギーロスが発生する


このように、高所にあるバルブは操作性の悪さから無駄なコストを生み出す要因となります。
有効な対策2つ
①手元で操作可能なバルブの増設
ラインごとの稼働時間が異なる際にライン単位でまとめて
エアー供給を停止できる手元バルブを設置
②送気ヘッダー設置による系統分け
送気元に送気ヘッダーを設置し、建物、フロア別などに系統を分け
稼働中の系統のみエアーを供給する運用へ変更
バルブの閉止でエネルギーロスを防ぐ具体策
エアー供給の見直しは、大がかりな設備投資をせずに、省エネを実現できる有効な取り組みです。
簡易なバルブの設置やラインの整理など、現場の状況に応じたアプローチを検討しましょう。小さな改善の積み重ねが、大きなコスト削減につながります。
手元バルブとヘッダー整備で誰でも止められる仕組みに
生産ラインの稼働状況に応じて、供給元をヘッダーで整理し、各ラインごとに手元バルブを設けます。
非稼働ラインへのエアー供給をこの手元バルブで停止できるようにすることで、ライン停止時に作業者がすぐにエアーを遮断できるようになります。
これにより、無駄なエアー供給を防止でき、コンプレッサーの負荷軽減につながり、結果として、電気代の削減やCO2排出量の低減といった、省エネ効果も期待できます。

エアー漏れ対策の成功事例を紹介
実際に対策を導入した事例から、具体的な効果や導入の工夫ポイントを紹介します。
現場改善の参考にしてみてください。
手元バルブ設置で電力使用量を12,581kwh削減できた事例
問題点
ライン非稼働時元バルブを操作し、エアー供給を停止したいが、バルブが高い位置にあり操作ができない
改善内容
手元にエアー供給停止用バルブを設置しライン非稼働時の供給を停止可能にしました。
その結果、コンプレッサーの負担が毛減少し、年間削減効果として、電力使用量12,581kwh、CO2排出量5.5t-CO2、換算金額19万円の削減に貢献しました。
よくある質問
小さな漏れでも1か所で年間数万円以上の損失になることがあり、さらに複数箇所あるとその被害は膨大になります。
延長ハンドルや手元で操作できるバルブの増設などが現実的です。配管の見直しも効果的です。
生産スケジュールをもとに、ラインごとの稼働ログを確認し、定期的に使用状況を記録して把握する方法があります。
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工場ペディア編集部からのメッセージ
設備改善がCO₂削減とコストダウンに直結
設備の改善は、「一石三鳥」の効果を生み出します。今回ご紹介したエアー漏れ対策は、電気代の節約だけでなく、設備の長寿命化やCO2排出量の削減にもつながります。
一見、手間がかかりそうな対策でも、小さな工夫を積み重ねることで、大きな効果が得られることは少なくありません。こうした改善は、今後の省エネ法対応やSDGs・カーボンニュートラルへの取り組みにも直結します。
まずは、現状の「見えない損失」を可視化することから始めてみませんか?
設備保全の観点から見ても、ライン単位でのエアー管理は非常に理にかなったアプローチです。
ぜひ、今日から取り組みをスタートしてみてください。

この記事を監修した人

高橋 秀文
豊安工業株式会社 設計部 部長
資格:一級管工事施工管理技士、給水装置工事主任技術者
得意分野:プラント配管設備全般
1996年の入社以来、エアーや冷却水、蒸気など多岐にわたる配管工事を手掛けてきた。現状調査から設計、積算、施工管理まで幅広い業務に対応し、自動車関連工場を中心に多様な規模の案件で実績を重ねている。エネルギー工学科出身の知識を活かし、効率的かつ精密な設計を得意としている。