
最近、新設ラインの配管工事を進めているんですが、どの支持金物を選べばいいのか迷っていまして…
錆の問題もあるし、耐震性も考えないといけないですよね?

おっしゃる通りです!
支持金物の選定は、材質・口径・温度・設置環境・耐震性能の5つの選定ポイントを見極めるのが基本です。

なるほど、そうやって選定ポイントを整理すると分かりやすいですね!
現場に合った支持金物を選ぶために、もう少し詳しく教えてもらえますか?

もちろんです。適切な支持金物を選ぶことで、配管の長寿命化と安全性の確保につながりますよ!
配管支持金物の役割と重要性
安全性と保守性の要
配管支持金物とは、天井・壁・床などに配管を固定・支持するための部品であり、配管を所定の位置に安定して設置するために欠かせない存在です。
特に、重量のある配管や長距離を通すケースでは、適切なピッチで支持しなければ、配管がたわんだり、最悪の場合は破損や漏れにつながることもあります。見落とされがちな部分ですが、安全性と保守性の観点から非常に重要なポイントです。
支持金物の選定が配管の寿命を左右している
配管の破損や漏れの原因に!?
適切な支持金物を選ばずに施工してしまうと、配管の破損や漏れの原因となり、重大な事故につながるリスクがあります。
特に、屋外や高温・低温環境、地震対策が必要なエリアでは、材質や構造の違いによって性能に大きな差が生じます。
配管の種類や設置環境に応じた支持金物の選定ポイントについて詳しく解説していきます。

配管支持金物の耐震区分
支持金物の種類や仕様は、配管の条件や建物の基準に応じて適切に選定する必要があります。特に、地震時の安全性を確保するためには、耐震設計に準拠した選定が求められています。
耐震区分はS種・A種・B種の3種類
配管支持金物の耐震性能には、「S種(最重要)」「A種(重要)」「B種(一般)」の3つの区分があり、これは『建築設備耐震設計・施工指針(2014年版)』に基づいて分類されています。
たとえば、S種は病院のガス配管や重要な工場設備など、非常時に機能停止が許されない設備に適用されるなど、用途に応じた明確な基準が定められています。
支持金物を選定する際の注意点
支持ピッチや材質選定の誤り
現場でありがちなミスの多くは、「支持ピッチ」や「材質選定」の誤りが原因です。
これらを見落とすと、施工後に配管が破損し、補修工事に多大なコストがかかることもあります。
屋外使用では錆に要注意
屋外で使用される支持金物は、雨風の影響を受けやすく、通常のユニクロメッキ品では早期に錆びてしまうおそれがあります。
それに、錆びた金物が折れると、配管や機器が脱落する危険性もあるため、材質の選定は慎重に行う必要があります。
一般的には、ステンレス製やドブメッキ処理された支持金物が推奨されます。


ドブメッキ処理された鋼材は、常時湿潤状態にある冷却塔の架台に1年間使用しても、錆が発生することはほとんどありません。
現場に最適な支持金物を選定するには?
支持金物の選定は、単にサイズを合わせるだけでは不十分です。
配管の特性や設置条件に応じて5つの選定ポイントから判断することで、長期的にトラブルの少ない施工が実現できます。
5つの選定ポイント
1.配管の材質
鋼管、塩ビ管、ステンレス管など、材質に応じて適正な金物や支持ピッチが異なります。
2.配管の口径
サイズが大きくなるほど、支持金物のピッチは広くなり、金物自体の強度も求められます。
3.配管の温度
高温配管では熱膨張への対応や、固定点の確保が必要です。
4.設置状況
屋内・屋外などの設置環境に応じて、適切な材質の金物を選定します。
5.必要な耐震強度
設備の重要性に応じて、S種・A種・B種といった耐震区分から選択します。

これら5つの選定ポイントを総合的に判断することで、過不足のない最適な支持金物を選ぶことができます!
選定ポイントを活かした現場事例
工場の新設設備におけるユーティリティ配管敷設で、支持金物を適切に選定・施工した事例を紹介します。
ユーティリティをまとめてコスト削減できた施工事例
愛知県碧南市 鋳造工場様
問題点
新設設備のユーティリティ(配管・電気・空調)を複数の業者が共用するため、共有の支持金物が必要となりました。
過去には、鋳造機周辺で支持金物のピッチが広すぎたことにより、配管や電気設備にたわみが発生する問題が起きていました。
施工内容
今回は、適正なピッチで支持金物を配置し、たわみの問題を改善しました。さらに、複数の業者が共用する構造であることから、十分な強度を確保するために、角パイプとチャンネル材を用いて支持金物を製作。強度面でも課題を解消しました。
お客様からの声
配管のたわみも改善され、多数のユーティリティをまとめて支持金物に乗せられたため、コストも削減でき、満足しています。

よくある質問
はい、細い配管であっても、たわみや衝撃による損傷を防ぐために支持金物は必要です。
特に振動が発生する箇所や、温度変化のある配管ラインでは、支持金物による固定が重要になります。
通常ならユニクロメッキで問題ありません。
結露が多い場所や極端に湿気が多いエリアならドブメッキを推奨します。また、薬品を使うエリアではステンレスを推奨します。
耐震性能の高い支持金物を使用すれば、確かに設備の安全性は向上します。しかし、その分コストも上昇します。
すべての設備に最上位の耐震仕様を適用するのは現実的ではありません。
設備の重要性や使用環境に応じて、S種・A種・B種などの耐震区分を適切に選定することが、経済性と安全性のバランスを取るうえで重要です。
工場ペディア編集部からのメッセージ
支持金物ひとつで変わる現場の安心
配管支持金物の選定は、設備の信頼性を支える非常に重要な工程です。
誤った選定や設置は、配管のたわみ・破損・脱落といった重大な事故につながるおそれがあります。特に、屋外や高温環境、耐震対応が求められる場所では、配管条件を正確に把握し、それに適した支持金物を選定する判断力が必要です。
今回ご紹介した5つの選定ポイントは、どの現場にも応用できる基本的な考え方です。
新設・改修を問わず、「なぜこの金物を選ぶのか?」という根拠を持った選定こそが、設備全体の長寿命化とトラブル防止につながります。
適切な選定と施工は、私たちプロにお任せください。

この記事を監修した人

仲山 佳丈
豊安工業株式会社 プラント管理部1課 係長
資格:1級管工事施工管理技士、給水装置工事主任技術者、第二種電気工事士
得意分野:プラント配管工事
配管設備の営業や施工管理を中心に、自動車部品製造工場での改修・修繕・改善工事を多く手掛けてきた。配管部材や機器の特性、仕組みに精通し、適切な選定と設計で高い評価を得ている。また、課内で1級管工事施工管理技士の勉強会を主導するなど、後進育成にも取り組んでいる。