
最近、暑くなってきましたね。冬の間は問題なく動いていたチラーですが、夏になったら冷水が作れなくなった…なんてことが起きないか不安です。

それは気になりますね。冬は外気温が低いため、多少冷媒ガスが漏れていても影響が少なく、気づきにくいことがあります。夏本番を迎える前に、チラーの定期点検をしておくことが重要ですよ。

なるほど…確かに、冷水が作れなくなってからでは手遅れですね。定期点検では、どんな点をチェックすればいいのでしょうか?

冷媒ガスの漏洩確認や部品の老朽化チェックが基本ですが、合わせて熱交換機の清掃も行うとトラブルを未然に防げることがあります。この記事では、チラーの定期点検のポイントを詳しく解説しますね。
チラー定期点検をすることの重要性
チラーのトラブルを防ぐために定期点検を!
チラーは、冷却設備として多くの工場や施設で使用されていますが、冬の間は問題なく動いていても、夏になると冷水が作れなくなることがあります。その原因の一つが冷媒ガスの漏洩です。冷媒ガスが不足すると、チラーの冷却能力が低下し、最悪の場合、設備が停止してしまいます。
さらに、チラーの耐用年数は一般的に15年とされていますが、毎日使用する場合は5~7年ほどで劣化が進むことも。そのため、定期点検を行い、冷媒ガスの管理や部品の老朽化をチェックすることが必要です。
定期点検を行うメリット
- 設備の突然の停止を防ぐ(夏場のトラブルを未然に防止)
- 法的義務を果たす(冷媒ガスの漏洩確認と報告義務を遵守)
- 日常点検の補助となる(異常の早期発見が可能)
ご参考資料:日本冷凍空調工業会様の資料「チリングユニット保守点検ガイドライン」と検索ください。
チラーの基礎知識と定期点検のポイント
チラーの基本構造と冷媒ガスの役割とは?
定期点検は欠かさないように
チラーは主に以下の部品で構成されています。
- 圧縮機(冷媒ガスを圧縮し、熱を奪う)
- 熱交換器(冷媒を通じて熱を移動させる)
- 冷媒ガス(冷却効果を発揮する重要な要素)
冷媒ガスにはフロンが使用されることが多く、環境への影響があるため、漏洩の有無を定期的に確認する義務があります。
もし漏れていた場合、国への報告が必要になるため、定期点検が欠かせません。
定期点検でチェックすべきポイント4つ
- 冷媒ガスの漏洩チェック(有資格者による確認が必要)
- 熱交換器の汚れ確認・清掃(汚れが溜まると冷却能力が低下)
- 部品の老朽化点検(耐用年数が5~7年の場合も)
- 異音や振動の有無(圧縮機やファンの異常を早期発見)


日常点検時に、冷媒圧力が高すぎたり、低すぎたりしていると、トラブルの前兆サインです。
見逃さないようにしてください!
チラーの点検で注意すべき問題点
冷媒ガスの漏洩は発見が遅れがち!
夏前に定期点検が重要な理由
冬の間は外気温が低く、多少冷媒ガスが漏れていても冷水が作れるため、異常に気づきにくいことがあります。
しかし、気温が上がると冷却能力が不足し、夏本番に突然トラブルが発生することもあります。
特に暖かくなってきた春先に異常が発覚しやすいため、このタイミングでの点検が推奨されます。
また、冷媒ガスが漏れているとしても修理できないような場所で漏れていたりすると、チラー自体の交換が必要になってきます。
そうすると、納期がかかり、夏までに間に合わないこともあるので、早めに点検されるのを推奨します。
熱交換機の汚れが冷却能力を低下させる
洗浄しやすいよう配管を設置
熱交換機に汚れやスケールが付着すると、冷媒ガスが効率よく熱を移動できなくなり、冷却能力が落ちる原因になります。
また、冷媒ガスの圧力が上がりすぎてしまい、チラーが異常として検知し、停止してしまうこともあります。
定期点検の際に清掃を行うと、本来の性能を維持しやすくなるため、トラブル予防の一環として実施することが望ましいです。
熱交換器は空冷式と水冷式のどちらかを採用されていますが、空冷式では外気に触れるフィンが汚れていないか、水冷式では熱交換器内部が汚れていないかが重要になります。
空冷式はフィルターの汚れを水洗いやエアーブローなどで清掃すれば良いですが、水冷式の場合、熱交換器の内部の汚れは見た目にはわからないので、定期的に薬品洗浄や、熱交換器の取替を行う必要があります。




水冷式の熱交換器はチラー内部にあるので、空冷式は側面のフィンにより、 洗浄できるように配管を設置するのがおすすめです。

今回熱交換を行っているので、こちらを清掃していただきました。
チラーの適切な管理方法とは?
定期点検と日常管理のポイント3つ
- 定期点検は年に1回以上実施する(専門業者に依頼)
- 冷媒ガスの圧力チェックを定期的に行う
- 日常点検では異音・振動の確認を習慣化する
熱交換機の清掃でトラブルを未然に防ぐ方法
安定に稼働させるために
- フィンやチューブの洗浄を定期的に行う
- スケール除去剤を使用して詰まりを解消させる
- 年数が経過している場合は取替を行う
これらの対策を行うことで、設備の不具合を予防し、安定稼働が実現できます。
ご参考資料:日本冷凍空調工業会様の資料「チリングユニットに用いられるプレート式熱交換器の取り扱いについて」と検索ください。



水冷式は薬品等により、熱交換器内部を洗浄することにより、能力改善される場合がありますよ。
よくある質問
使用頻度にもよりますが、最低でも年1回の定期点検が推奨されます。毎日使用する場合は5~7年で老朽化が進むため、特に注意が必要です。
有資格者による確認と修理が必須です。2015年に国への報告義務が制定されました。適切な手続きを行いましょう。
工場ペディア編集部からのメッセージ
チラーのトラブルゼロで夏を乗り切る!
チラーは安定した稼働のために定期点検が不可欠な設備です。
しかし、夏場になってからのトラブルは生産ラインの停止につながる可能性もあるため、事前のメンテナンスが非常に重要です。特に、冷媒ガスの漏洩や熱交換機の汚れは見落とされがちですが、適切な管理を行うことで、設備の故障を防ぐことができます。
今年の夏をトラブルなく迎えるために、暑くなる前にチラーの点検を実施しましょう!

この記事を監修した人

高須 康太郎
豊安工業株式会社 第2プラント管理部
資格:管工事施工管理技士 1級
得意分野:給排水衛生設備工事
製造業を中心とする食品工場や自動車部品工場、中小企業から1部上場企業まで幅広いクライアントの建物の改修や新築工事における給排水衛生設備工事を多く経験している。社内での教育活動やお客様向けの勉強会においても、その専門知識を活かし給排水衛生設備工事について指導している。