
蒸気配管の保温施工をしていますが、まだ使えるのか、更新するとしたらいつ頃なのか…
判断が難しく悩んでいます。

劣化は判断もつきづらく見過ごしがちです。
そのまま放置するとエネルギーの無駄や設備の劣化へつながってしまいます。

そうなんですね。まだ使えるか、更新するとしたらどんな材料を使って施工するかなど、気を付ける点など教えてほしいです!

更新せずに劣化した状態で使い続ければ、エネルギーロスはもちろんのこと、作業者が火傷を負うなど危険も発生します。早めの対応がおすすめです!
今回は、保温の重要性、更新のタイミング、さらに施工時のワンポイントまで順に解説していきます。
蒸気配管の保温施工はなぜ必要?
保温施工は、工場のエネルギー効率を向上・維持するために欠かせない施策です。
適切に施工されていないと、放熱によるエネルギー損失が発生し、コストの増加だけでなく、安全性の低下にもつながります。
さらに、劣化した保温材を使い続けると、本来の性能が発揮できないうえ、配管の外部腐食や火傷のリスクも高まります。
工場配管の調査や更新履歴を記録し、状況を把握しておくことが、トラブルを未然に防ぐうえで非常に重要なのです。
保温施工の基礎知識、保温の劣化を放置するリスク、適切な更新タイミング、施工時のポイント について解説します。
蒸気配管の保温施工に関する基礎知識
保温施工はエネルギー効率を保つために不可欠
保温施工は、エネルギー効率を維持するために欠かせません。
特に高温の蒸気を扱う設備では、適切な保温材を選定、適切に施工することで、エネルギー損失を最小限に抑えることができます。
保温施工の効果3つ
1.エネルギー効率の向上
放熱を抑え、無駄なエネルギー消費を削減します。
2.安全性の確保
火傷リスクを低減し、作業者の安全を守ります。
3.配管の寿命延長
外部腐食の進行を抑え、配管の耐久性を維持します。
保温材を選定する際は、使用温度帯や周囲環境(屋外・屋内、酸性環境など)を考慮することが重要 です。
保温材ごとの使用温度帯及び使用設備・環境に応じたカバー一覧表
種類 | 上限使用温度 | 使用設備 | 環境に応じたカバー |
---|---|---|---|
グラスウール | 400℃ | 蒸気配管 | 屋内、安価で抑える場合は金網 屋外、食品、酸系工場はラッキング(ガルバリウム/SUS) |
ロックウール | 650℃ | 高圧蒸気配管 | ラッキング(ガルバリウム/SUS) |
保温劣化した蒸気配管を放置するリスク
配管保温の劣化を放置すると発生する問題
配管保温の劣化を放置すると、エネルギーのコスト増加や作業者の火傷リスクが高まります。リスクを理解し、早めの対応を心がけましょう。
放熱によるエネルギーの無駄とコスト増加
保温材が劣化すると放熱量が増え、エネルギーの無駄が発生することも。具体的には、蒸気を生み出すための水、燃料、電気が余分に消費されることがあります。
さらに、蒸気ドレン量が増加することで、設備全体の運用効率が低下するだけでなく、配管の腐食による漏れやウォーターハンマーなどのトラブルにつながり、結果として無駄なコストが増加します。

特に深刻なのは、保温材が外観からも劣化している状態では、十分な保温能力が発揮されません!
施工されているように見えても実際は保温が機能していない可能性があります。その状態では、保温施工がされていない配管とほぼ同じで意味がありません。
安全性の低下と火傷リスク
保温施工がされていない、または不十分な蒸気配管に触れると、高温のため火傷を負うリスクがあります。特に作業者が頻繁に接触する可能性のある箇所では、リスクがさらに高まります。
放熱量を比較 保温施工配管と裸配管


蒸気配管保温の更新タイミングと施工ポイント
保温施工の更新タイミングを適切に判断し、最適な材料を選定することで、エネルギー効率や安全性を向上させます。
更新タイミングの判断基準
保温材の劣化が目立つ場合
保温材のつなぎ目にひび割れや脱落が確認されたら、即座に更新を検討 しましょう。保温材は水分を含むと著しく性能が低下するため、特に屋外配管は要注意です。
エネルギー使用量が増加している場合
エネルギー使用量の増加=コスト上昇 を意味します。保温材の劣化が原因で放熱量が増え、無駄なエネルギー消費につながっている可能性があります。
施工時のワンポイントアドバイス
ワンポイントアドバイス3つ
- 使用環境を把握
目視確認に加え、接触温度計などの機器を使用して測定し、正確な温度を把握する - 最適な保温材の選定
調査したデータを基に、周囲環境や温度帯に応じた適切な保温材を選ぶ - 保温ジャケットの活用
メンテナンス性を考慮し、バルブやスチームトラップには着脱可能な保温ジャケットを採用する


熱中症の危険も!高温設備による作業員のやけど対策は?保温ジャケットで解決した事例3選
この時事では、保温ジャケットの効果を具体的にイメージできるよう、装着前後の表面温度を比較したデータを掲載しています。
バルブやオーダーメイド商品の保温ジャケットを実際に取り付けた写真や、お客様の感想も紹介中です。
数値を入力するだけで放熱に関する対費用効果を算出できる「省エネ効果 簡易計算シート」もダウンロード可能ですので、「調査依頼までは考えていないけど、概要を把握しておきたい!」という方は、ぜひご活用ください。

蒸気配管保温更新で効果を実感!
「放熱守るくん」蒸気配管の保温更新による効果事例
「放熱守るくん」 を採用し施工後のメンテナンス性が大幅に向上した事例
蒸気配管の保温を更新した結果、放熱によるエネルギー効率の改善や蒸気ドレン量の軽減、安全性の向上 を実現できた事例を紹介します。
事例1:エネルギー効率の改善とコスト削減
問題点
食品工場の蒸気配管では、屋外の保温材に ひび割れや一部脱落が発生 していました。これにより、露出部からの放熱ロス が常に発生し、雨天時には配管表面の放熱が目に見えるほど になっていました。その影響で、蒸気ドレン量が増加し、エネルギー消費が増加傾向にありました。
改善内容
現地で目視確認を行い、サーモグラフィーを使用して保温材の劣化状況や配管表面温度を計測。その結果をもとに、適切な保温材を選定し、劣化箇所を含む周辺の保温を更新しました。
また、雨による配管表面の腐食が確認されたため、一部配管の更新も提案し、実施しました。さらに、スチームトラップやバルブ部分には着脱が容易な保温ジャケット「放熱守るくん」を採用し、点検やメンテナンス性を向上させることができました。
結果
- 放熱量の削減により、エネルギーコスト・蒸気ドレン発生量が減少し、設備効率が向上
- 配管腐食を早期発見できたことで漏れリスクを解消
- 保温ジャケットの採用により、点検や修理の作業時間短縮・材料費削減を実現
- 作業者の負担軽減および火傷リスクの低減にもつながった
お客様の声
ボイラー室から工場各ラインへの蒸気配管の一部で屋外配管があります。屋外配管において保温外観劣化をボイラー点検時に教えていただき一緒に現地確認をしたところ目視での放熱を確認しました。そこで保温更新及び一部配管更新の提案をしていただき、今回実施に至りました。施工後は目視での放熱はなくなり、お客様が来社された際に見た目が綺麗になり見栄えが物凄く良くなりました。

蒸気配管の保温施工は、エネルギー効率の改善だけでなく、安全性の向上や設備の寿命延長にも大きく貢献します。
保温材の適切な選定と施工のポイントを押さえることで、工場運営にメリットとなります!
保温施工を行う際は、現場環境をしっかり把握し、最適な対策を講じることが重要です。
よくある質問
配管及び対象物の使用温度帯や周囲環境(酸性の強い環境、屋外など)に応じて適切な保温材を選定する必要があります。
着脱が可能なため、メンテナンスが容易になります。特に点検や修理を必要とするスチームトラップ、バルブにおいて利便性が高いです。
工場ペディア編集部からのメッセージ
省エネと安全性を両立する保温施工を目指して
蒸気配管の保温施工は、エネルギー効率の向上だけでなく、安全性や配管寿命の延長にもつながる重要な施策です。本記事を通じて、保温施工の重要性や更新のタイミング、保温ジャケット採用によるアフターメンテナンスのメリットについてご理解いただけたかと思います。
今後も、省エネや環境負荷の軽減、コストダウンの実現に役立つ情報を発信してまいります。ぜひ、工場の効率改善にお役立てください。


近藤 完哉
豊安工業株式会社 メンテナンス部メンテ課
資格:一級ボイラー技士、第二種電気工事士、二級管工事施工管理技士、危険物取扱者乙種4類
得意分野:ボイラー、配管工事(蒸気)
メンテナンス部でボイラーや圧力容器の定期点検業務、配管工事に従事。
ボイラー点検後の予防保全や既設配管の改善工事を得意とし、多様な現場で経験を積みながら、お客様のニーズに応えるサポートを行っている。