設備工事の品質をどう平準化する?
60項目チェックとOJTで工事品質を高める取り組み

設備工事は完成した時点では問題なく見えても、数年後に不具合が出ることがあります。施工品質をどう管理すればいいのか悩むことがあります。

設備工事は経験に頼る部分が多く、会社の中でも品質に差が出やすい分野です。
そこで当社では、工事品質を60項目のチェックリストで確認し、さらにOJTとして現場チェックを行う取り組みを始めました。

現場をチェックしながら教育もする仕組みなんですね。

はい。属人化を減らし、どの現場でも一定以上の品質を確保することを目指しています。

目次

設備工事では、図面通りに施工しているつもりでも、細かな部分で品質差が出てしまうことがあります。

  • 担当者によって施工品質が変わる
  • 担当者ごとに施工方法が違う
  • 完成後に施工ミスが見つかる
  • 数年後に設備トラブルが発生する

特に見落とされやすいのが、時間が経ってから差が出る品質ポイントです。

  • 配管支持の間隔(支持ピッチ)
  • 防錆処理
  • 仕上げ

施工直後は問題なくても、数年後に差が出るケースは多いですね。

こうした品質のばらつきを防ぐため、当社では設備工事の品質チェック基準(60項目)を作成しました。

チェック項目は次の分類で構成されています。

  • 管材選定
  • 支持金物選定
  • 配管施工基本事項
  • 支持金物取付け
  • 弁類の設置
  • 計器類の設置
  • 管路の絶縁対策
  • 管路のドレン対策
  • 管路の熱伸縮対策
  • 機器の防振対策
  • フレキシブル継手設置
  • 仕上げ
  • 客先別重点事項

これらは、配管設備の信頼性や安全性に直結する重要なポイントです。
例えば、蒸気配管のドレンポット設置や支持間隔の確認など、設備の長期運用に大きく影響する項目が含まれています。

品質チェックは、机上の確認だけでなくOJTとして現場で実施しています。 設計部のベテラン社員が現場を確認することで、施工品質のチェックと同時に技術教育の機会にもなります。

実施の流れは次の通りです。

事前にチェック予定を共有し、担当者が社内品質基準を確認できるようにします。

工事品質チェックシートをもとに施工状況を確認します。

チェック結果を共有し、必要に応じて改善対応を行います。

チェック結果を社内で共有し、会社全体の品質レベルを高めるための議論を行います。

この取り組みにより、工事品質は最大で次の4重チェック体制で確認されています。

作業責任者による確認

工事責任者による確認

上司による確認

OJTチェック

設計部ベテラン社員による確認

現場チェックでは、次のような見落としが見つかりました。

配管支持は使用管材や口径ごとに規定の設置間隔が定められていますが支持金物の数は配管距離に比例して膨大になることも珍しくないため、細かく確認していくと不足部分が見つかる事があります。

常時の運転では問題は無くても地震などの際に影響が出る可能性があるため、抜けの無いよう注意が必要です。

施工直後は問題なく見えても、時間が経つと錆が浮いてくることがあります。
こうした部分は部材の耐用年数にも影響します。

設備工事では、施工直後は問題なく見えても、数年後に差が出る部分があります。
特にボルト締結の確認、防錆処理などの「仕上げ」は、部材の耐久性や安全性に影響する重要なポイントです。

そこで当社では、工事品質を平準化するために仕上げ作業に関する社内基準を定めています。

現場ごとの判断に任せるのではなく、一定の品質を確保できるよう、具体的な作業内容や確認ポイントを明文化しています。

ここでは、その社内基準の一部をご紹介します。

鋼材加工によって製作した配管支持部材を設置する場合、鋼材の角部には面取り加工を行います。

また、レースウェイなど既製品の金属製支持材を設置する場合には、両端に専用の保護キャップを取り付けます。

こうした処理は、作業者が設備周辺で作業する際のけがの防止を目的としています。

※社内基準では床上、作業床より高さ3m以下に設置する場合を対象としています。

防護処理の例

配管接合部(ねじ部・溶接部)や鋼材加工部には、防錆処理を行います。メッキ処理されていない鋼材を使用する場合には、防錆塗料で全面塗装を行います。

OJTチェックでも指摘が多い項目のひとつです。「施工直後はきれいに仕上がって見えても、時間が経つとサビが浮いてくることがある。配管の耐用年数に直接影響する」と担当者は話します。見た目では判断しにくいからこそ、基準に沿った処理を徹底することが重要です。

防錆処理の例

フランジボルト、支持金物のボルト・ナット、アンカーなど、本締め後のすべての締結部に「アイマーク」(ライン状のマーキング)を施します。

対象となる箇所は以下の通りです。

  • 配管フランジボルト
  • 支持金物のボルト・ナット
  • 鋼材加工物の固定ボルト
  • 機器固定ボルト
  • アンカー
  • 盤内配線端子

ボルトとナットにまたがる線が一直線に揃っているかどうかを見るだけで、緩みや締結忘れを目視で即座に確認できるのが利点です。施工後の自主確認だけでなく、OJTチェックや定期点検の際にも有効な手段です。

アイマーク(締結確認)の例

配管に設置するバルブには、開閉表示札を取り付けます。「常時開」「常時閉」の2種類を使い分け、通常時のバルブ状態を確認できるようにする事で点検・メンテナンス時や 緊急対応時におけるバルブ操作後の復旧ミスを防ぎます。

配管には流体名と流れ方向を表示します。「どの配管に何が流れているか」「流れの向きはどちらか」が一目でわかる状態にしておくことで、点検・メンテナンス時や緊急対応時、また改修工事などの作業手順ミスを防ぎます。

表示の基準は以下の通りです。

  • 横引き管:20mごとに1箇所以上
  • 縦管:延長距離2m以上の系統に1箇所以上。フロアを貫通する場合は各階に1箇所
  • 保温付き配管:保温付き配管では、口径表示も推奨

※開閉表示、流体表示に関しましては社内基準を基にお客様と 御協議の上、取付けの有無や詳細を決定させて頂きます。

配管に流体名と流れ方向を表示した例

取り組みを始めてから、現場では次のような変化が生まれました。

  • 上司と部下の品質に関する会話が増えた
  • 工事担当者が事前に社内基準を確認する習慣ができた
  • 品質への意識が高まった

まだ取り組み開始から日が浅く、今後さらにデータを蓄積しながら品質改善の分析を進めていく予定です。

当社では、品質評価で100点を合格基準としています。

製造業の現場では、設備工事に対して非常に厳格な品質基準が求められます。当社はそうした水準の品質を、取引先の規模や業種を問わず、地域のあらゆる工場に提供したいと考えています。

設備工事の品質が高まれば、次のような効果が期待できます。

  • 設備が壊れにくくなる
  • 長く使える設備になる
  • 安心して生産できる工場になる

また、施工管理における品質管理を徹底することは、各工程の基準や仕様を満たすだけでなく、不具合を未然に防ぎ、安全確保や手直しによる無駄なコストの削減にもつながります。こうした積み重ねが、お客様からの安心と信頼を生み出す重要な要素だと考えています。

さらに当社では、勘や経験だけに依存した技術伝承から脱却し、品質基準やチェックの仕組みを通じて技術を共有することで、若手社員の成長やより良い職場環境づくりにもつなげていきたいと考えています。 こうした取り組みを通じて、東海地区のユーティリティ設備分野において、より信頼される技術会社であり続けることを目指しています。

Q
工事品質チェックはどのくらいの頻度で行っていますか?
A

現在は毎月2回程度、一定規模以上の設備工事を対象に実施しています。将来的には小規模な工事でもチェックできる仕組みを整備していく予定です。

Q
60項目のチェックはどのように作られたのですか?
A

これまで三河地区を中心とした東海地域の工場設備工事で培ってきた経験をもとに、配管設備トラブルの原因になりやすいポイントを整理して作成しました。
まずは「最低限ここまでは確認する」という基準としてまとめています。

また工事品質チェックでは項目以外でも気になる点があれば指導と記録を行っています。

今後は項目外における指導記録を元に必要と考えられる内容が有ればチェック項目として定期的に追加していく予定をしています。

Q
工事品質チェックは現場の負担になりませんか?
A

チェック自体は半日程度で実施しています。
むしろ事前に品質基準を確認する習慣ができたことで、施工後の手直しやトラブル対応が減り、結果として現場の負担軽減につながっています。

Q
仕上げ基準はなぜ重要なのでしょうか?
A

ボルト締結確認や防錆処理、防護処理などの仕上げ作業は、施工直後には問題がなく見えることが多い部分です。
しかし、こうした細かな作業が配管設備の耐久性や安全性に大きく影響するため、社内基準として明確に定めています。

Q
この取り組みは耐震対策にも関係がありますか?
A

関係があります。
配管支持の間隔やフレキシブル継手、伸縮対策などの施工品質は、地震時の設備被害にも影響します。
日常の施工品質を高めることは、結果として配管設備の耐震性向上にもつながります。

Q
設備工事の品質はどこで差が出るのでしょうか?
A

設備工事の品質は、配管ルートや機器選定といった設計だけでなく、施工時の細かな作業によって差が出ることがあります。
例えば次のようなポイントです。

・配管支持の間隔(支持ピッチ)
・ドレン対策
・熱伸縮への配慮
・防振対策
・防錆処理や表示ラベルなどの仕上げ作業

これらは施工直後には問題なく見えることも多く、見落とされがちな部分ですが、配管設備の耐久性や安全性に大きく影響します。
当社ではこうした品質のばらつきを防ぐため、60項目のチェック基準やOJTによる現場確認を行い、施工品質の平準化に取り組んでいます。

Q
設備工事の品質を上げるにはどうすればよいですか?
A

設備工事の品質を高めるためには、個人の経験や感覚だけに頼るのではなく、会社として共通の基準と確認の仕組みを持つことが重要です。

例えば次のような取り組みが効果的です。

・施工品質のチェック基準を明確にする
・現場でチェックできる仕組みを作る
・ベテラン社員による確認や教育を行う
・チェック結果を社内で共有し、改善につなげる

当社では、設備工事の品質を安定させるために

60項目の品質チェック基準
OJTによる現場品質チェック
仕上げ作業の社内基準

を整備し、施工品質の平準化に取り組んでいます。
こうした取り組みを継続することで、設備トラブルの予防や長期的な設備の安定稼働につながります。

設備工事品質チェック現場セルフチェックシート(無料ダウンロード)
設備⼯事品質チェックシート
施工品質のばらつきや見落としを防ぐための「現場セルフチェックシート」をご用意しました。
当社で実際に使用している品質チェック基準(60項目)の一部をもとに、現場で確認すべきポイントを整理しています。
日々の施工確認や品質改善にご活用ください。

設備工事は完成した時点では問題なく見えても、施工品質によって設備の寿命や安全性が大きく変わります。

今回紹介したような品質チェックや社内基準の整備は、配管設備の信頼性を高める重要な取り組みです。

設備が長く安定して稼働することは、設備更新の削減や省エネにもつながります。これはCO2削減やサステナブルな工場運営、BCP対策の観点からも重要です。 日々の施工品質を高めることが、持続可能な生産環境を支える基盤になります。

高橋 秀文

高橋 秀文

豊安工業株式会社 設計部 部長
資格:1級管工事施工管理技士、給水装置工事主任技術者
得意分野:プラント配管設備全般

1996年の入社以来、エアーや冷却水、蒸気など多岐にわたる配管工事を手掛けてきた。現状調査から設計、積算、施工管理まで幅広い業務に対応し、自動車関連工場を中心に多様な規模の案件で実績を重ねている。エネルギー工学科出身の知識を活かし、効率的かつ精密な設計を得意としている。

工場ペディア監修

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