
最近、冷却塔の効きが少し悪い気がしていて…
もしかしたら内部が汚れているのでしょうか?ただ、どこをどう点検すればいいのか、あまりよく分からなくて。

そのお気持ち、よく分かります。
冷却塔の効率が落ちてしまう原因としては、水槽の汚れやスケール、藻の付着によるケースが多いんです。
それに、外からは見えない部分が汚れている可能性もあります。
定期的な清掃や点検はされていますか?

年に1回くらいですね、特に連休明けはバタバタしてしまって…
やっぱり定期的な清掃って大事なんですね。

はい、特に上部のスケールや詰まりには注意が必要です。
実際に、緊急で対応しなければならなかった場面もありました。
ここでは、冷却塔メンテナンスの基本や実際の例も交えてお伝えしますね!
冷却塔のメンテナンスが工場の安定稼働に直結する理由とは?
工場の空調や設備冷却に欠かせない装置
冷却塔は、工場の空調や設備冷却に欠かせない装置です。一方で、目に見えない部分で汚れや劣化が進みやすい設備でもあります。
適切なタイミングでメンテナンスを行わないと、冷却効率が低下し、エネルギーコストの増加や突発的なトラブルにつながってしまうおそれがあります。
冷却塔の役割と重要性
冷却塔は、冷却水を再利用しながら機器の温度を適正に保つための装置です。空調や冷却設備、製造ラインなど幅広い設備で使用されているため、工場の安定稼働には欠かせません。
しかし、長期間の運転や環境要因によって、内部には藻やスケールが付着しやすく、それが冷却性能の低下を招いてしまいます。
そこで、定期的なメンテナンスを行うことで、設備の寿命を延ばし、トラブルを未然に防ぐことができます。
冷却塔メンテナンスで押さえるべき基本構造と劣化ポイント
冷却塔は、上部水槽・下部水槽・充填材・送風ファンなど、複数のパーツで構成されています。それぞれの部位で汚れが蓄積しやすい場所や、劣化しやすいポイントが異なるため、清掃や点検の際には注意が必要です。
まずは、冷却塔の基本的な構造と、どこが劣化しやすいのかを把握することが、効率的なメンテナンスにつながる第一歩となります。
メンテナンス対象となる冷却塔内部の構成部品
上部水槽・下部水槽は水が滞留しやすく、スケールや藻が蓄積しやすい部位で、充填材は熱交換効率に直接関わるため、定期的な洗浄が欠かせません。
加えて、消音マットの汚れやファンモーターの劣化も見逃せないポイントであり、摩耗や腐食が進行する前に早期発見し、対策を講じることが大切です。
さらに、目視では確認しづらい場所で詰まりが発生するケースもあります。
クーリングタワーのストレーナ部分に付着したスケールや藻も、定期的に清掃し、除去する必要があります。
放置された冷却塔が招くトラブルと電力ロス
不具合を見過ごすと設備全体に影響することも
冷却塔の汚れや不具合をそのままにしておくと、冷却性能が落ちるだけでなく、余分な電力を消費したり、機器の故障につながってしまうことがあります。
特に、スケールが蓄積すると配管が詰まりやすくなり、水の流れが乱れることで、設備全体に影響が及ぶ可能性があります。

写真ではクーリングタワー内部の水を一度抜くと、スケールなどが沈殿しているのを確認することができます。

電力消費の増加とトラブルの連鎖
冷却塔が正常に働いていない状態が続くと、冷却水が十分に冷えず、その分チラーやほかの冷却設備が過剰に稼働してしまい、結果として電力消費が増えてしまいます。
スケールや藻による目詰まりは、冷却水の戻り不良やオーバーフローを引き起こし、突発的な停止につながるケースもあり、こうしたトラブルは、保全担当者にとって大きな悩みの種です。
写真は、クーリングタワー上部のスケールなどが目詰まりし、オーバーフローを引き起こした様子です。

効果的なメンテナンス方法と推奨スケジュール
点検チェックシート
冷却塔のパフォーマンスをしっかり発揮させるためには、定期的な清掃と点検を計画的に行うことが大切です。
スケールや藻の除去はもちろん、部品の摩耗状況の確認や電圧チェックなど、全体をバランスよく見ていくことが求められます。
清掃ポイントと点検項目
月次での目視点検、四半期ごとの水槽清掃、年次での高圧洗浄や部品交換を行うことが推奨されます。
特に、連休明けや停電復旧後などの稼働前には、高圧洗浄でスケールや詰まりをリセットする対応が効果的です。
それに、ポンプやファンの電圧を測定することで、電気系統の異常を早い段階で見つけることができます。


年次点検でポンプ点検を行うことで、電流値など確認し対策することができます。
冷却塔の高圧洗浄と点検でトラブルを防止した事例
緊急対応でスケール詰まりを解消した事例
愛知県 自動車部品工場様
ある工場では、連休明けに冷却水の戻りが悪くなり、冷却塔でオーバーフローが発生しました。
調査の結果、上部に付着したスケールと藻の詰まりが原因であることが分かりました。
そこで、弊社で緊急の高圧洗浄を行い、スケールと藻を除去したところ、冷却効率が回復し、オーバーフローも解消されました。
定期的なメンテナンスの大切さをあらためて実感いただいたケースです。
クーリングタワーの清掃で改善された事例
愛知県 自動車部品工場様
問題点
連休明けにクーリングタワーより水が溢れてしまったため、原因を追求したところ、クーリングタワーのストレーナ部がゴミやスケールが詰まって水が流れない状態になっていました。
改善内容
ストレーナの清掃及びクーリングタワーについているスケールを高圧洗浄で清掃し、クーリングタワーの清掃を行いました。
その結果、水が溢れることなく、循環するようになりました。
お客様の声
普段、メンテナンス等をしていないクーリングタワーを定期的に清掃する大切さに気づき、定期的に清掃することになりました。
それ以来、水が溢れることなく、順調に稼働できるようになりました。

よくある質問
月次での点検に加えて、四半期ごとの水槽清掃、さらに年次での高圧洗浄を実施する体制をおすすめします。
このサイクルを継続することで、冷却塔の状態を安定して保つことができます。
水質管理をしっかり行い、必要に応じて薬剤を投与することで、スケールの発生を抑えることができます。
ファンやポンプの負荷が増えてしまうことや、熱交換効率が低下することが主な要因です。
工場ペディア編集部からのメッセージ
冷却塔の適切な管理が工場設備の安定稼働を支える
冷却塔は、工場全体の冷却能力を支える、とても重要な設備です。稼働中はあまり目立たない存在ですが、設備全体の温度管理に深く関わり、不具合や効率低下が起きると、生産ラインや空調にも影響が広がってしまいます。
だからこそ、定期的な清掃や点検を実施することで、故障や性能低下を未然に防ぎ、設備の寿命を延ばすことにもつながります。
この記事では、冷却塔メンテナンスの基本、実際の対応事例をご紹介しました。ぜひ日々の保全活動にお役立ていただければ幸いです。

この記事を監修した人

大倉 一淳
豊安工業株式会社 プラント管理部2課 係長
得意分野:プラント配管工事、工場新築、改修工事衛生設備
工場のプラント管理や営業に従事。溶剤配管の選定や施工方法の提案に特化し、耐震補強に伴う設備移動やユーティリティー配管の迂回設計にも実績がある。自動車部品製造工場や食品工場での施工管理を通じ、多岐にわたるニーズに応える柔軟な提案力を発揮している。




