
「最近、夏場になるとコンプレッサーが急に停止してしまうことが多くて…。
現場が止まるのは困るんですよね。

おそらく室温の上昇による設備の温度異常が原因ですね。
コンプレッサー室の上限温度は40℃です!!
特に近年の酷暑では、従来の換気や冷却設備の仮設対応だけでは限界があるケースも多く見られますよ。

暑すぎると以前のままではダメなんですね。
どこを見直せばいいでしょうか?

吸気・排気の通風、断熱、空冷補助設備の設置など、多角的に見直すことで改善できます。
まずはコンプレッサー室の状況をしっかり確認しましょう。
コンプレッサー室がこんな状況ではありませんか?
- 夏場コンプレッサーが温度異常で停止する
- 夏場におけるコンプレッサー室の温度上昇対策を仮設でおこなっている
- コンプレッサーが短期間で故障する
- 近年になって異常停止が発生するようになった
- 夏場になるとコンプレッサーの能力が不足する
コンプレッサー室の異常停止が増える理由とは?
近年、「夏場にコンプレッサーが停止する」という相談が増えています。特に室内の空冷式コンプレッサーのトラブルが目立ちます。
近年の夏は酷暑化することが多く、今まで問題のなかったコンプレッサー室でも従来の換気や温度上昇の仮設対策だけでは対応しきれない場合があり、異常停止や過負荷、ドライヤーの停止などのトラブルが起こりやすくなります。

なぜコンプレッサー室の温度管理が重要なのか?
コンプレッサー室の温度が上がることで、コンプレッサーが吸い込む空気の温度も上昇し、同じ量の圧縮エアーを作るためにより多くの空気が必要になります。
そうなると、運転効率が低下し機器に高い負荷をかけてしまい、消費電力が増加したり、エアー不足や故障のリスクが高まります。

吸い込み側が同じ体積の空気量でも、空気密度の高い、冷えた空気の方がより多くの圧縮空気(エアー)を作れます。

吸い込み温度と運転効率の関係
吸い込み温度が10℃上がるごとに、必要な消費電力が3~4%程度増加する傾向があります。
運転効率の観点からも、適正な吸排気と断熱対策が不可欠です。

放置すると大変なことに!
コンプレッサー室が暑いことによる三大リスク
- コンプレッサーのオーバーヒート停止による生産への影響
- コンプレッサーへの負担増によるメンテナンス周期や本体寿命の低下
- コンプレッサー効率の低下によるエアー不足や消費電力上昇

停止しないことだけ考えていましたが、いろいろと不具合がありますね。もっと早く対策を検討すべきでした。
コンプレッサーの夏場トラブルを
抑制するためのチェックポイント
- 吸気ガラリのサイズが適正か
- 吸気口前に適正なスペースがあるか
- 排気口と吸気口が近接していないか
- 本体カバーが外されていないか
- 適正なメンテナンスが継続されているか
- 室内への断熱対策はされているか
- クールファンやエアコンで室温を下げているか


止まらなければいいと思われがちですが、吸排気の配置や定期メンテナンスを怠ると、効率低下や寿命短縮、電気代の増加につながります。暑さ対策はコスト対策でもあるのです。
老朽化が進んでいたら、コンプレッサーの更新も選択肢に
コンプレッサーの老朽化などで設備更新する場合、屋内の空冷式コンプレッサー以外にも以下の選択肢があります。
水冷式コンプレッサー
空冷式と比較して、水冷式コンプレッサーは本体からの廃熱量が約5分の1と非常に少なく、コンプレッサー室の温度上昇を大幅に抑えることができます。
また、水冷式は空冷式と比較して周囲温度の影響を受けにくいため、夏場の高温環境でも安定した運転が期待できます。特に工場内の温度管理が難しい現場では、空冷式に比べてオーバーヒートのリスクが低く、結果として生産の安定化や保守コストの削減にも貢献します。


ランニングコスト的には空冷式と水冷式のどちらが良いかは設置状況によって変わってきますが、毎年夏場におけるコンプレッサーの運転トラブルが多くお困りの際は、選択肢のひとつとしてご検討してみてはいかがでしょうか。
屋外型コンプレッサー
屋内設置に比べて、屋外型コンプレッサーは吸排気の負担が軽減されます。
増設時も、屋内機のように吸気ダクトや排熱対策を追加で設ける必要がなく、空調負荷や設置スペースの制約を受けにくいのが利点です。
また、屋外設置によりコンプレッサー室内の温度上昇を防げるため、他の機器への熱影響も抑えられます。


増設やレイアウト変更にも柔軟に対応できるため、将来的にコンプレッサー拡張を考えている場合の選択肢にもなります。
よくある質問
一般的には40℃が上限とされています。それ以上になると、性能低下や故障リスクが高まります。
一時的な効果はありますが、コンプレッサーの発熱量は大きく、空調機単体では能力不足になることも多いです。
吸排気の見直しや断熱対策との併用が効果的です。
コンプレッサー室への出入りは熱中症にもつながりかねません。
リモートで温度変化が分かるIoT機器などが有効です。自動でデータを蓄積したり、異常が起こる前の対策にもなります。
まずは室温や吸排気の状況、エラー表示を確認してください。
温度異常による停止時は、冷却後に復旧する場合もありますが、原因の根本的な改善が必要です。
工場ペディア編集部からのメッセージ
スモールスタートで熱からコンプレッサーと現場を守ろう
生産ラインの突発停止、設備への過負荷、現場作業者の負担──
近年の猛暑が引き起こすコンプレッサー室でのトラブルは、どれも、現場にとっては重大なリスクです。
しかし、すべてを設備更新で解決する必要はありません。夏が本番を迎える前に「吸気口の前にモノが置かれていないか」「排気の熱がこもっていないか」など、まずは身近な点検や小さな見直しからはじめてみてはいかがでしょうか。

この記事を監修した人

高橋 秀文
豊安工業株式会社 設計部 部長
資格:一級管工事施工管理技士、給水装置工事主任技術者
得意分野:プラント配管設備全般
1996年の入社以来、エアーや冷却水、蒸気など多岐にわたる配管工事を手掛けてきた。現状調査から設計、積算、施工管理まで幅広い業務に対応し、自動車関連工場を中心に多様な規模の案件で実績を重ねている。エネルギー工学科出身の知識を活かし、効率的かつ精密な設計を得意としている。